
映画『サウンド・オブ・ミュージック』の劇中歌「My Favorite Things(わたしのお気に入り)」が好きだ。雷を怖がる子どもたちを元気づけようと、主人公のマリアは、自分の好きなものを次々にメロディにのせていく。バラについた雨粒、子猫のひげ、磨いたやかん、毛糸のミトン、包装されたプレゼント……並んでいるものに統一感はない。それなのに、一曲として聴くとまるで違和感がない。この歌を聴くと、たとえ一つひとつに脈絡がなくても、自分の内から湧き上がる「好き」で選んだものたちは調和するのだと、心強くなる。
わたしの机の引き出しには、美術館に行くたびに買ってしまうポストカードがあふれている。決して美術に詳しいわけではない。それでも展示室を歩いていると、「ああ、これ、家でも眺めたいな」と思う作品に出会う。色づかい、構図、描かれている空気感、いっしょに行ったひととその作品の前でしたおしゃべりなど、理由はさまざまだ。作品そのものというより、作品の前で心がふっと動いた感覚を手元に置いて覚えておきたいのかもしれない。その作品がポストカードになっているのをミュージアムショップで見つけると、つい手が伸びる。
ポストカードたちを引き出しの肥やしにするのはもったいないので、時折、大きなフレームにコラージュして飾っている。印象派のやわらかな風景の横に、民藝のどっしりとした器。モダンデザインのポスターの下に、静かな人物画。ふつうなら隣り合わないような作品たちが、案外違和感なく、フレームの中でひとつにまとまる。共通しているのは、時代でも国でも作風でもなく、“わたしのお気に入り”であること。
部屋づくりも、きっと、ポストカードと同じだ。木の家具があって、古道具があって、旅先で買った小さな置物がある。少しずつ趣の違うものたちが、“わたしのお気に入り”という軸によって、ひとつの景色に馴染んでいく。
そして、部屋をつくっているのは、目に見えるものだけではない。ドアを開けた瞬間にふわりと迎えてくれる香りもまた、その部屋の景色を織りなす大きな要素。アシュレイ&バーウッドのフレグランスランプは、専用オイルを替えることで、香りを自由に選べる。昨日は爽やかなシトラス、今日は落ち着いたウッディといった感じで、その日の気分で香りを着替えるのが楽しい。もしまだ試したことがないなら、“わたしのお気に入り”の香りたちをブレンドする楽しみ方もおすすめしたい。
「この甘さが好き」「この爽やかさが好き」と集めたお気に入りのフレグランスオイルたちを、少しずつ重ねてみる。意外な組み合わせが思いのほか心地良かったりするから、おもしろい。ときには、「うーん、これはちょっと違うかも」と笑ってしまうこともあるかもしれないけど(ポストカードのコラージュでもたまに起こる)、その試行錯誤まで含めて、自分だけの香りを見つけていく時間は贅沢だ。
マリアが歌う「My Favorite Things」に登場するお気に入りが、どれひとつとして似通っていないように、“わたしのお気に入り”のフレグランスオイルも、ひとつではない。甘い香りも好きだし、森を思わせる深い香りにも惹かれる。すっきりした柑橘も、やさしい花の香りも好き。その一見まとまりのない香りたちが、“わたしのお気に入り”という軸を通してひとつの空気になる。
ポストカードをコラージュするように、フレグランスオイルを重ねる。そうしてできあがった香りのブレンドも、“わたしのお気に入り”のひとつになる。
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