
あたたかい陽射しが降りそそぐ休日の楽しみのひとつは、素足にソックスで出かけられること。タイツでもストッキングでもない、ほんの少し無防備な足もと。スカートの裾をふくらませる風が、ふくらはぎに直接触れる。やわらかく、でもまとわりつかずサラサラと、肌をなでていく。この風といっしょに、どこまでも歩いていきたくなる。
上からすぽっとかぶって着るジャンパースカートなら、肩から足もとまでをふんわり包んでくれるのが、いっそう心地いい。ベルトもゴムもなくて、からだのどこも締めつけられない。生地とからだのあいだに薄い層がひとつあって、そこに風が入り込む。ジャンパースカートという名前が、つい、“ジャンプするひと(jumper)”を連想させるのもステキだ。風に乗ると、気持ちも跳ねる。
ふわりとジャンプして風に乗るひとといえば、メリー・ポピンズである。こどもの頃に観た映画『メリー・ポピンズ』の冒頭、黒い傘を手に空からすっと現れ、ゆっくり地上に降り立つ彼女は、優雅で、重力から自由で、格好よかった。物語のラストも、家庭教師を務めたバンクス家との別れに浸ることもなく、さらりとまた風に乗って去っていく。メリー・ポピンズがいなくなったあとのバンクス家には、喪失感よりも“風通しのよさ”が余韻として残る。メリー・ポピンズはスカートではなく傘で風をつかまえるのだけど、ジャンパースカートを着て出かけるとき、わたしは、どこかメリー・ポピンズになった気分で、乗る風を選び、風に運ばれる爽やかさを味わうのだ。
もっとも、ジャンパースカートのジャンパーは、ジャンプすることとは直接関係がない。ジャンパーはイギリス英語でセーター類を指し、その上から着られるエプロン状の服ということで、日本ではジャンパースカートと呼ばれるようになった。なるほど、それはそれでいいじゃない。言葉の由来がどうであれ、颯爽と歩くときに、信号待ちで立ち止まったときに、スカートの裾が風でわずかにふくらんで、また静かにおさまる繰り返しがたのしいのは事実だ。
まちの風は、建物の角を曲がりながら、気まぐれに方向を変える。山の方へ向かえば、もう少し大きな風に出会える。はたまた海に行けば、湿り気を帯びた風が方々から吹く。まち、山、海……風はそれぞれにちがう表情をしている。目的地を決めず、風をつれて歩くためにあっちこっちする休日も、たまにはいいんじゃないかしら。
ジャンパースカートの裾に入り込んだ風が、素足をなでる。そのたびに、自分が風をつれているのか、それとも風に運ばれているのか、わからなくなる。けれど、その曖昧さごと、春と夏のあいだのたのしみだと思うことにしよう。風に乗るわたしは、今日もいくぶん、重力から自由だ。
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