
最近、ささやかな趣味としてVlogを撮りはじめた。ブログ(Blog)の動画(Video)版、Vlog。きっかけは、ビデオグラファーのひとがSNSで紹介していた「1秒ずつ繋げただけのVlog」だった。旅先や日常で“いいな”と思ったら立ち止まり、スマートフォンのカメラで3秒だけ動画を撮る。あとで撮った順に1秒ずつ切り取って繋げると、それだけで思い出になるショートムービーができあがるのだ。
今までも“いい一瞬”を残したくて写真を撮ってはいたけれど、動画になると少し勝手が異なる。山道をのぼる足元、海のきらめき、コーヒーカップにのぼる湯気、車窓からの景色など、“いい動き”を探すようになった。そして、もうひとつ。動画には、動きといっしょに音も収まる。音にも、その場の記憶が思いのほかパッケージされることを知った。葉を擦り合わせる木々や鳥のさえずり、街のざわめき、電車のガタンゴトン――写真を撮るときには気に留めていなかったけれど、世界にはたくさんの“いい音”があふれているんですね!
不思議なもので、動きや音にも意識を向けはじめたら、世界がグッとにぎやかになった。道路を行き交うカラフルな車に、停泊中の船が波に揺られてガコンガコンと当たる音。以前からそこにあったはずのものたちが、急に存在感を帯びだした。それだけわたしが世界の動きを見過ごし、音を聞き流していたということだろう。
すると気になってくるのが、家の中。外へ出ればたくさんの豊かな音があるのに、家ではそれらを締め出して暮らしている。いまでは夏も、エアコンをつけて窓を閉めきることが多い。快適ではあるけれど、部屋はどこか“無味無音”になる。もちろん、パソコンやエアコンはモーター音を鳴らして静かに働いている。でも、Vlogで暮らしの記憶として残したい音たちは、窓の向こう側に切り離された別世界だ。
家の中と世界をつなげたくて、窓辺に風鈴を吊るしてみた。南部鉄器の風鈴は、ガラスよりも余韻が長い。短くチリンではなく、音がすっと伸びる。窓を開け、ひとたび風鈴がリーンと鳴ると、その音につられて意識が家の外に向く。風に揺れる街路樹や、電線に止まる鳥たち、郵便配達のバイク、近所の公園で遊ぶ子どもたちの気配が家の中に入ってくる。
窓を閉めきって“無味無音”でいるのはもったいない。世界には今日も、こんなにたくさんの音がある。窓を開けよう。風が、音になってやってくる。
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