
命あるアート、盆栽を未来へ。
情熱をかける「THE ETORA BONSAI」
松嶋 獅道
THE ETORA BONSAI
かつてのシニアの趣味というイメージを払拭し、リース事業などを通じて世界の人々や幅広い世代に盆栽の魅力を伝える「THE ETORA BONSAI」。300年後も残り続ける命ある作品を創り続け、“盆栽が未来をつくる、盆栽の未来をつくる。”をテーマに活動。次世代へと命を繋いでいくことを使命とする「THE ETORA BONSAI」が目指す境地とは。
スペシャルムービー公開中

日本文化の象徴を、
次世代へ継承する。
盆栽は平安時代から続く日本の文化であり、貴族から大衆まで、幅広い人々に親しまれてきた歴史がある。今、この時代にある盆栽たちは、戦争や大きな災害など激動の時代も乗り越え、人から人へと受け継がれてきたもの。いわば日本人が繋いできた愛情の結晶と言える。「盆栽は平和の象徴であり、日本人の精神性と深く結びついているんです」と松嶋獅道は言う。
これまで寺社の再生プロジェクトや、日本酒を若い世代に広めるプロジェクトに関わり、日本のカルチャーに触れる機会が多くあった松嶋。趣味で始めた盆栽の好きが高じて京都の盆栽園をいくつか訪ねたが、どこも主は高齢で、後継者不足。いつかは盆栽文化がなくなってしまうのではと危機感を持ち、我々の世代でこの命を絶やすわけにはいかないと思い、これを生業にすると決断する。当時80歳を超えていた師匠に教わり、盆栽作りをスタート。「盆栽って、道楽なんです。今は海外でも注目されて、この世で唯一、命があるアートだと言われてることにも、ロマンを感じます」。松嶋の想いはあふれる。

盆栽を、
より多くの人の目に触れる場へ。
主に盆栽のリースを行う「THE ETORA BONSAI」。数々の空間デザインや店舗デザインを行ってきた経験から、単に空間に盆栽を置くのではなく、空間全体をデザインすることを重視。ホテルのエントランスなど、その空間に最適な盆栽の配置や形を意識し、盆栽が持つ生命力や歴史が最大限に引き立つように演出している。強みは、“守破離”を重んじながらも伝統的な盆栽の枠にとらわれず、現代の空間やライフスタイルに合わせた提案ができる点だ。和の空間だけでなく、ラグジュアリーやモードなどの空間にも調和し、強い存在感を放つ。
春なら桜、秋には紅葉など季節感のある盆栽を置くことで、常に新鮮な空間を提供し、日本の四季を感じさせることで観る人を楽しませる。盆栽は屋外で育てるものだが、室内に展示することで生育環境の変化を伴うため、数日での入れ替えや手入れなど、とても手間がかかる。しかし、盆栽の文化を守る、次の世代に残すという使命感から、盆栽愛好家に向けてではなく、盆栽を未だ知らない多くの人々の目に触れる場所に展示し、盆栽の魅力に触れてもらうことに意欲的だ。

不変と変化が織りなす美。
盆栽の魅力は、人の手が入ることにより、美しく育つ点にある。数日でも水やりを怠れば枯れてしまう繊細なものだが、剪定や針金かけといった手入れによって、盆栽は唯一無二の姿へと変化する。手入れの方法など同業者間での情報交換も活発で、古くからの知恵や工夫に新たなアイデアを加えて、より美しい盆栽作りを目指し、皆で文化を守っていこうという気概が感じられる。
特に松嶋がこだわるのが、木が経験してきた困難や歴史を表現すること。不変の盆栽の美しさを守りつつ、現代の感性を取り入れて、荒々しさや険しさの中に、奥行きのある美しさを創り出している。たとえば幹の動きや枝の出方、樹皮の質感など、すべてがその木の生きてきた歴史を表すため、それらを“魅せる”ように仕立て、最も良い姿へと仕立てることに情熱を注ぐ。小さな鉢の中に、その木が辿ってきた物語の縮図があるのだ。

今回のフェア
「Japan and me. 」への想いを聞いた。
このテーマを聞いた時、盆栽は日本人の精神性を表すとともに古くから共に生きてきたものであるため、特別な感情を抱くというよりは、自然と心に入ってくる感覚があった。ノーベル賞を受賞した川端康成の「美しい日本の私」でも、日本文化の素晴らしさが伝えられている。受賞記念講演の中で「日本の庭園もまた大きい自然を象徴するもの。その凝縮を極めると、日本の“盆栽”となり、“盆石”となる。」とおっしゃっていた事を思い出した。また、海外で日本の盆栽が高い評価を受けるのは、そこに“侘び寂び”や“風情”といった日本独自の空間美や美意識が感じられるからだと思う。海外にも盆栽文化はあるが、日本の盆栽、特に黒松や赤松、五葉松などは、日本人らしい優しさを感じさせる。
盆栽は敷居が高いと思われがちだが、インテリアとして気軽に楽しむなど、もっと自由に接してほしい。盆栽は本来“道楽”であり“遊び”。枯らしてしまうことを恐れずに、その過程も含めて楽しんでほしいと願っている。プロであっても枯らしてしまうことはあり、その経験から学ぶことも多い。
ふだんはリース業のみで、販売はしていない「THE ETORA BONSAI」。今回は特別に販売も行う。日本の盆栽文化を守るためにも、多くの人に、盆栽の魅力、育てる楽しさを知ってほしい。そして、日本の盆栽が“平和の象徴”や“日本の象徴”になってほしいと願っている。今回の取組みを通じて、来場者にその思いを感じ取っていただければと思う。


THE BONSAI
= ROOTS OF NIHON DORAKU
THE ETORA BONSAI
● 9月24日(水)~30日(火)
● 8階 コトコトステージ81


1988年、京都市生まれ。22歳の頃から数々のスタートアップ事業や日本文化のプロジェクトに触れてきた。松盆栽に魅了され、趣味で始めた盆栽が後継者不足である事を知り、数年前に盆栽を生業とする職人の道へ。「人生で何を得るか」ではなく「何を残すか」という人生理念から、300年後も残り続ける盆栽をつくるため、2024年「THE ETORA BONSAI」という新たなブランドをプロデュース、主に盆栽のレンタル・リース事業や盆栽を使ったイベント企画などを展開する。