阪急うめだ本店

Japan and me. 日本のお正月

BUAISOU スペシャルインタビュー | Japan and me. 日本の美と技を未来につなぐ

special interview

熱中のその先に。
青き生命が湧き上がる。

BUAISOU 藍師・染師

かつて藍染めの原料となる“蒅(すくも)”の一大産地として栄えた、徳島県吉野川流域。この地で2015年に起業し、その手でしか生み出せない“青”を追い求める集団がいる。楮覚郎(かじ かくお)を代表とする移住者を中心に結成されたBUAISOUである。

藍農家、染屋、型付師など分業制が主流の藍の世界において、彼らは全工程を一貫で手がけるFarm to Closet(農場からクローゼットまで)を体現している。藍の種をまき、土を耕す。収穫した葉を発酵させて藍の原料となる蒅(すくも)造り、染め液を仕込む藍建てを行い、デザインから染色、制作に至るまで、すべてを自分たちの手で行う。そんな彼らが今春、阪急うめだ本店のコンコースウィンドー全7面を舞台に、本質的な生命の物語“芽吹き”を描き出す。

微生物と対話する、生きた青

東京の大学で染織を学び、地域おこし協力隊として徳島へやって来た楮覚郎。「藍には強い興味があり、本場で学びたい一心で。良いご縁が重なって、ここで活動をスタートできた。それが今日まで続いている感じです。藍に繋がることすべて、農業から染めまで、好きなことだらけです。」と嬉しそうに話す。とにかく藍が好き、その情熱が伝わってくる。

徳島は江戸時代から「阿波藍」ブランドを築いてきた歴史がある。今、この時代に彼らが耕している畑は、150年前にも確かに藍が育てられていた場所。歴史の連続性に、深いロマンを感じる。「徳島に代々続く藍師の家や、藍染め職人の家に生まれていたら、まったく違った考えを持っていたはず。伝統を守るという意識よりも、昔の人がどう取り組んでいたのかという興味の方が強いですね。」まさに温故知新。自分たちらしい方法を日々模索し続けている。

藍の染め液は生き物だ。pH計などの数値管理には頼らず、メンバーの勘と経験、そして手触りという感覚を大切に、目をかけ、手をかけている。5つある槽はそれぞれ性格が異なり、日々コンディションが変化する。液が元気か、休ませるべきか。「手袋をつけると、やっぱり感覚が鈍る。見極めるためにも、自分の手で触って、確かめます。」強アルカリの液に触れ、対話しながら納得のいく色を追い求める。その頑ななまでの追求が、生きた色の揺らぎ、唯一無二の美しさを生み出す。

全工程を一貫して手がけるのは、こだわりというよりも、自らが納得できるものづくりを突き詰めた結果だ。「分業の方が効率的かもしれませんが、何からできていて、どう作ったのか。自信を持って世の中に出せる正直なものづくりを大切にしたい。歴史から学ぶこともあるけれど、自分たちらしい方法で余計な要素をそぎ落として、究極にシンプルな形を目指しています。」

鍛えられた命、その始まりの瞬間

BUAISOUにとっての“芽吹き”は、1年で最も心が震える光景。春先、ビニールハウスの中で、1万個の種が不思議と同じタイミングで一斉に土を押し上げる。その圧巻の光景を前に、メンバーで「芽吹いたね!」と喜び合う。しかし、“芽吹き”は優しいだけのものではない。ここからが本当のスタートで、秋の刈り取りまで気が抜けない日々の始まりでもある。“芽吹き”の時期は、3月末から4月頭。奇しくもBUAISOUが手がけるウィンドーがお披露目される頃と重なる。

80メートルのキャンバスを貫く
青の揺らぎ

ウィンドーのスケールを活かすべく、大胆なことに挑戦する。「四元素や五行思想など、素材そのものとの繋がりもテーマに盛り込んで。単なる作品展示ではなく、阪急のウィンドーとしてどうあるべきかを深く考えました。」

全7面のウィンドーには、藍づくりに欠かせない5つの要素がストーリーとして散りばめられている。藍を育む基盤であり、蒅(すくも)を造る寝床の素材でもある“土”。徳島の藍を支えてきた吉野川の伏流水を表現する“水”。微生物が発酵の過程で放つ生命の熱“火”。収穫した藍の葉を乾燥させ、ウィンドーの中で軽やかに布をなびかせる“風”。最後にすべてが合わさって、完成した藍の色そのものである“空”へたどり着く。

このストーリーを伝えるために、素材選びには特に注力したという。“土”なら不純物が残ったままの野性味溢れる麻、“風”は蚕の糸を数本合わせた糸で仕上げたトンボの羽のように軽いシルク。素材からイメージを膨らませ、藍の濃度を決めていった。「藍ってただの色でしかなくて、大切なのは何に染めるか。真っ白の生地を染めることが藍そのものの色なのかもしれないけれど、僕らはそれを伝えたいわけじゃない。素材本来の色と、藍が重なって生まれた色が、一番綺麗だと思っています。」

今回、世界中から集めた様々な布の“生成り色”を、同じ藍の槽で同時に染め上げる。これはBUAISOUにとっても初めての試みだ。素材の個性が藍をまとい、異なる表情を見せる。「黒に近い深い藍から、春の空のような淡い藍まで。これだけ表情が違うんだ、という驚きを見ていただきたいです。」

彼らにとって藍は、“日本”や“伝統”というよりも、“自分たちが熱中しているもの”。「その積み重ねが、結果として伝統に繋がっていくのだと思っています。」純粋に、ひたむきに、藍と向き合うBUAISOUが生み出す色。コンコースを歩く人々を圧倒する青の連なりは、私たちを、見たこともないような深く、美しい藍の世界へと誘う。

スペシャルムービー公開中

※ 画像はイメージです

未来への芽吹き - 藍の可能性-

● 4月1日(水)〜 5月 18日(月)
● 1階 コンコースウィンドー

artist profile

BUAISOU

藍師・染師

「藍の本場で挑戦してみたい。」2015年、徳島県にて設立。楮覚郎を代表とし、総勢5名からなる藍師・染師の集団。原料となる藍の栽培から、 蒅(すくも)造り、染色、デザイン、製作まで、昔から分業制であった藍染業を一貫して行う。また、藍染のオリジナル商品の製作、コラボレーション、国内外での展示やワークショップなども実施、様々な手法で天然藍の魅力を伝えている。

デザイン・染色:楮覚郎
染色・縫製:小園忠、石田宏武、清水雄大

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