大阪・関西万博の感動が再び。
伝統工芸を生かしたドレス展示。
大盛況のうちに閉幕を迎えた2025年 大阪・関西万博。パソナグループのパビリオン「PASONA NATUREVERSE」を訪れたVIPをお迎えするアテンダント用のオートクチュールドレスは、人生100年時代を体現する当時97歳の現役デザイナー、藤本ハルミが手がけたことで数多くのメディアに取り上げられ、大きな反響を呼びました。今後、パソナグループが進める淡路島へのパビリオン移設計画で活用される予定ですが、今回、阪急うめだ本店での特別展示が決定。本展は全20着のドレス展示とともに、彼女の熱い思いが感じ取れる内容となっています。
1927年神戸生まれ。小川洋裁学院卒業後、東京・神田駿河台にある文化学院美術部へ進学。1954年、神戸に洋裁店「オートクチュール・マーガレット」を開店、神戸のファッションシーンに大きな影響をもたらす。日本の伝統である西陣織や友禅染のきもの地や帯地を使ったドレス制作をライフワークとし、70歳でパリオートクチュールコレクションへの参加を皮切りに、モナコやニューヨーク、イタリアでショーを開催。今も精力的に活動を続ける。


日本の伝統文化と
オートクチュールの融合。

藤本ハルミがこのオファーを受けたのは、自身が1970年の大阪万博(日本万国博覧会)に何度も足を運び、たくさんの刺激を受けたこと。そして、時を経て同じ大阪で開催される大阪・関西万博という「世界各国から人々が集まる場で、日本の伝統文化を発信したい」という思いから。
ドレスの一着一着には “祇園山鉾” “桜吹雪” “松竹梅” といった、日本の美意識を象徴する名称がつけられており、単なるユニフォームではなく「日本の伝統に “いのち” を吹き込み、きものや帯の持つ美しさと価値を次世代に引き継ぎたい」という強いメッセージが込められています。


98歳になってもなお
たゆまぬ情熱。

独創的で日本らしさが随所に感じられるドレス。その起点には、1つの出来事があったそうです。「戦後、洋裁店を開いてドレスを作り出した頃は、生地のほとんどがヨーロッパなど外国産。初めて外国に行った時、ふと、全部外国の生地で作っているけれど、日本人が受け継いできたきもの地とはまったく違うなと気がついたの。もっと日本に目を向けて大事にしないといけないな、と。」当時習っていた華道の師範から、「君が国賓として海外に招待されたときに、着ていきたいものを作りなさい。」と言われたことも後押しに。「私が作ったドレスを海外の方にも見てもらって、日本の繊維や織物はやっぱり素晴らしいと感じてほしいと思っています。」

伝統の技を
再構築してドレスに。

伝統生地を扱うのは、とても難しいと言います。「だいたい量が少ない。帯は生地幅が30cmほどしかない。帯にはしっかりとした織物の裏がついているから、それも使って。どこに、どういう風に使うかがとても重要になってきます。柄の持っている魅力を、ドレスに仕立てた時にしっかり見えるように。難しい、けれど面白い。」柄の合わせ、色の見え方を工夫し、本当に綺麗だと思って作ったものを、これまでのショーなどで海外の人たちが認めてくれたことも、活動を続ける原動力になっているのだそう。
「日本の気候、日本人の体に適した繊維から作られたきもの地や帯地。その文化はとても素晴らしいと改めて思う。」日本で初めて藤本ハルミが考案・制作した、きもの地や帯地を使ったオートクチュールドレス。ディテールの美しさ、生地合わせの妙を、ぜひ近くで見ていただければと思います。















