AW2023

今、世間ではデジタル化が加速し、
AIが幅を効かせている。
欲しい情報やモノに簡単にアクセスできる
便利な時代になったことは、
多くの人々にとってとても喜ばしいことだろう。
ただその分、ワクワクするような面白さは減り、
なんだかつまらない世の中に。
そこに突然訪れた、想定外のパンデミック。
頻発する自然災害、
いつまでも終わらない紛争……。
ようやく活気が戻り始めたけれど、
誰も経験したことのない未知なる不安は、
私たちの周りに暗い影を落としたまま。
この霞んだ世界を明るく変えてくれるのは、
機械やAIでは生み出すことのできないような、
予測不能で刺激的なアイデアをおいて他にない。
そこでたどり着いたキーワードが“GROOVE”。
人間が“GROOVE”することで
生まれる奇跡的な閃きに、
私たちの明るい未来がかかっている。
「GROOVE とは?」と聞かれても、はっきりと答えられる人はいないだろう。しかし、「なんだかわからないけれど、リズムやビートが心地よい、いい感じの演奏」という漠然とした共通認識は、皆が持っているはず。ここで大切なのが、この“なんだかわからない”という部分。GROOVE は偶然から生まれるもので、そもそも説明がつかないからこそ、魂に染み入るような心地良さにつながっているのだ。そして「予想がつかない」という時点で、機械やAIが GROOVE 感を再現することは不可能だろう。GROOVEは、五感を研ぎ澄ませた人間から生まれるもの。私たちをワクワクさせてくれる、理屈抜きに湧き上がってくる感情のうねり、爆発的な高揚感に突き動かされ、思わず体が動き出す。私たちを、そんな本来あるべき姿へと誘ってくれるのが、この GROOVE なのである。
そこで2023-2024年秋冬のHANKYU.MODEは、“LET’S GROOVE”をテーマに、人間の GROOVE から生まれるアート作品のようなアイテムをクローズアップ。“DOPAMIN BRIGHT”というキーワードの下、脳幹を刺激するようなブライトカラー同士の掛け合わせや誇張されたフォルム、職人の手仕事から生まれるディテールを備えたウエアや小物など、開放的になりつつあるマインドを一層刺激するピースを揃えている。ランウェイから、STELLA McCARTNEY、CHLOÉ、NOIR KEI NINOMIYA、MARNI、JIL SANDERなど、旬なデザイナーが提案する躍動感に満ちたコレクションをピックアップ。
また、シーズンローンチのイメージモデルには、ストリートカルチャーからモダンアート、舞台、モードまで、ジャンルを越えてさまざまなシーンで躍動する表現者、AOIYAMADAを起用。特別に製作したムービーの中では、彼女が“LET’S GROOVE“を独自に解釈した、心を揺さぶるようなパフォーマンスを披露。
そしてもうひとつ注目は、パフォーマンス前後やルックの背景に用いられたインパクトのあるグラフィックだ。滋賀県にあるアートセンター兼福祉施設『やまなみ工房』に所属するアーティストの作品をコラージュしたもので、これぞまさに“人間力”の賜物。そこには、AIには到底真似ができない、果てしない生命力が感じられる。これをGROOVEと言わずして、なんと表現しようか?今、断然面白いのは、やっぱり人間である。

アオイヤマダ    Aoi Yamada

2000年生まれ、長野県松本市出身。メディアアート集団ダムタイプ『2020』、東京オリンピック2020閉会式にソロ出演後、ヴィム・ヴェンダース映画『Perfect Days』、ショートフィルム『KAGUYA BY GUCCI』、Netflixシリーズ『First Love初恋』や映画『唄う六人の女』に役者として出演。その独自の感性で幅広いジャンルで活躍を広げる表現者。

やまなみ工房    Atelier YAMANAMI

滋賀県甲賀市にあるアートセンター・福祉施設「やまなみ工房」には、現在約90名の利用者が通所し、“ありのままの自分を表現し、楽しく過ごす”というスローガンのもと、日々創作活動が行われている。山間の自然豊かな環境の中、社会的な称賛や評価にこだわることなく、衝動のままにつくり出される作品の数々は、国内だけでなく、スイス『アールブリュットコレクション』やフランス『ABCDコレクション』など、前衛的なコレクションに次々と収蔵され、世界的な注目を集めている。
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