
冬の早朝散歩は、多かれ少なかれ覚悟がいる。夏のように太陽が照りつけてはいないし、春のような華やぎもない。いざ玄関を開けて歩き出せばからだが温まり、澄んだ空気も相まって爽快感に包まれることがわかっていても、午前6時、アラームを止めたばかりの寝ぼけ眼のわたしに、その爽快感は夢物語にしか思えない。陽が昇る前のほの暗さのなか、冷えた空気が部屋の隅々までゆきわたっているのが肌でわかる。
ふわぁぁぁ…とあくびをして布団のぬくもりを味わっていると、ベッドの脇で気配が動いた。犬だ。鼻先で布団をつつき、控えめな声でひと鳴きする。散歩の時間だと、この子はわかっているのだ。決して吠えないところが、慎ましいのか、したたかなのか。
観念して、ベッドから這い出る。そして床に足を下ろした瞬間、冬の朝の本気が身にしみる。君はこの冷えを感じないのかね!?と思わず犬を見やると、澄んだ瞳で尻尾を振っている。「勝った!」とでも思っているのだろう。わかったわかった、行こうね、散歩。
顔を洗って台所に行き、冷蔵庫から取り出した焼き芋をアルミホイルに包んでトースターに放り込む。カイロ代わりにも、休憩地点でおやつにもなる焼き芋は、わたし(たち)の冬の散歩の定番アイテムだ。トースターで温めているあいだに身支度を済ませ、コートのポケットに焼き芋を入れ、リードを手に取ると、犬はもう玄関で待っている。
玄関も寒いが、ドア1枚を隔てた外は、もうひと回りもふた回りも寒い。幹線道路沿いの並木はすっかり葉を落とし、枝の輪郭がくっきりと白む空に浮かんでいる。冬の朝は、何もかもがいつもよりくっきりしているように思う。空の色だって、淡い青から薄桃色へと境目がわかるほど明瞭だ。そんななかで、ポケットの焼き芋のぬくもりだけがホクホクと輪郭が淡い。
散歩の折り返し地点にある見晴らしのいい公園でベンチに腰を下ろし、ポケットから焼き芋を取り出す。アルミホイルを開いた瞬間、甘い香りが立ちのぼる。犬が期待をこめた目でこちらを見ている。ほどよく冷めた焼き芋をひとかけら、ルールを守って分けてあげると、満足そうに尻尾を振った。
ちょうど朝焼けの時間。輪郭のくっきりしたオレンジ色のグラデーションが目に飛び込んでくる。これを見たくて冬も変わらず早朝散歩をしていると言っても過言ではない。犬はもちろんグラデーションの具合をわかっているわけではないだろうけれど、飼い主が毎日毎日ここでほっとひと息ついている様子は察してくれているみたい。おすわりをして、ふたりでホクホクを分かち合い、しばらく同じ方向を向く。その時間は静かで、素朴で、ほのかに甘い。
「焼き芋はもうおしまい?」と言いたげな目で、犬がわたしを見上げてくる。今朝の焼き芋がいつもよりも小さめのかけらだったことに、気づいたらしい。「もうちょっと欲しいよねぇ…」と、もったいつけながらジャーキーを1本取り出して与えてみると、嬉しそうにかぶりつき、そして、「あれ?」という顔をした。「芋だ!」って分かったのかしら。
そう、これは、さつまいも(と乳酸菌)だけで作られたペット用ジャーキー。先日お店で見つけ、個包装だから散歩に持って行くのにもちょうどいいなと買ってきたのだ。ムシャムシャと気に入ってもらえたみたいでよかった。これからは、散歩のおともが焼き芋じゃないときだって、わたしがおにぎりを食べる隣で、この子はさつまいもジャーキー。ホクホクはなにも、物理的なぬくもりだけではない。朝焼けを眺めながらほっとひと息、気持ちのホクホクを分かち合うのも素敵だもの。
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