取り掛かるまで憂鬱で、さんざん引き延ばしてしまうのに、それでいて、いざ始めるとどんどん調子づいていく――この現象が「あるある」なひとは少なくないと思う。わたしも然り。現在午前1時、クローゼットからスーツケースを引っ張り出して、明日からの旅行のパッキングをようやく終えたところである。荷も心も準備万端、今すぐにでも出発したい。
パッキングは、旅行の数日間(場合によっては数十日間)に必要なものを一つずつスーツケースにセットアップしていく作業であり、「わたしはどう過ごしたいか」の積み重ねだ。たとえば、洗顔用具や化粧品。大きなボトルや何種類ものアイシャドウでスーツケースを占めるのはもったいない。必要最小限を詰め替えたり選んだりしてポーチに入れる。ガイドブックや靴も同じ。スーツケースに荷物が加わるたびに、旅程のイメージが輪郭を帯びていく。持ち物のセットアップ(準備)は、旅モードへの気持ちのセットアップ(切り替え)と重なり合っている。
パッキングを終えて最後に、明日着ていく服をクローゼットから取り出して、ラックにかける。汚れやシワがついていないことを念のため点検するためだ。うん、OK。
これから数日間を“相棒”として過ごす服に選んだのは、ウエスタンシャツとデニムパンツのセットアップ(組み合わせ)。上下が同じ素材で仕立てられているから、セットで着れば統一感が生まれる。もちろん、単品で装っても違和感はゼロ。旅行のシーンや寒暖に合わせて着回しが効くところが気に入っている。ハリ感のあるシャツはボタン部分がパールになっていて、たとえば食事の席では、デニム特有の軽やかなニュアンスとともに女性らしさも演出してくれる。散策中に前を開けてジャケットのように羽織ったり、朝晩の肌寒いときには重ね着にもぴったりだ。
デニム地といえば硬さを思い浮かべがちだけれど、“相棒”は柔らかく、肌にすっと寄り添ってくれる。飛行機や車のシートにもたれても突っ張らず、脚を組み替えたり伸ばしたりしても窮屈さを感じない。パンツのウエストが総ゴムなのも、いい。旅に移動はつきもの。移動の数時間をただ「耐える時間」にせずに窓の外の景色に心を解き放てるのは、この着心地のゆとりのおかげだと思う。
心を解き放つことは、わたしが旅行をするときの大きなテーマかもしれない。ふだんの暮らしでは「整える」ことに意識を払いがちだ。髪を整え、時間を整え、台所を整える。だから旅行のときこそ、日常から飛び出して「ただそのまま、気にせずにいられる」ことを味わう。デニムのセットアップは“相棒”として、わたしが移動中や旅先で「ただそのまま、気にせずにいられる」ように、気持ちをセットアップ(切り替え)してくれる。
いくつもの似た意味を持つ「セットアップ」という言葉。スーツケースに荷物を詰める手の動きと、旅行に着ていく服を選ぶときの感覚は、どちらも「これからの時間をどう過ごしたいか」をかたちにしているんだろうな。
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