梅雨の時期ならではの、はっきりしない空模様。朝、カーテンを開けて見上げる空が曇っているだけで、何を着るか迷う。天気予報から察するに、今日も高めの気温、湿気がからだにまとわりつくだろう。降るのか、降らないのか。雨で服を濡らしたくないな。でも、レインウェアで蒸れて肌がベトつくのも好きじゃない。
最近見つけたゴアテックスのショートブルゾンは、そんな日の羽織ものとして「正解」なのではないかと感じている。軽く、しなやかで、上品な素材感とシルエットが織りなすほどよく都会的な佇まい。それでいて、「水は通さずに空気や水蒸気は通す」魔法のような機能もたずさえている。雨粒をしっかりはじきながら、肌の熱や湿気は外に逃がす。「守るところは守り、通すところは通す」という絶妙な性能が、雨の日でもおしゃれを諦めたくない気持ちを後押ししてくれる。
若い頃は、「おしゃれは我慢」と信じていた。雨の予報が出ていても、デートでどうしても着たかったレース編みのカーディガン。小雨なら平気だろうと踏んでいたらまさかの土砂降りで、横なぐりの雨がカーディガンに打ちつけ、ずっしり濡れたまま冷房のきいたカフェに入ったら見事に風邪をひいた。その反省から雨に備えてトレンチコートを羽織った日には、湿気でコートがからだにまとわりつき、通勤電車とエレベーターの中でサウナのような汗だく状態になったことも。帰宅してトレンチコートの裾についた泥はねに気づいたときには、泣きたくなった。それでも「おしゃれは我慢」が自分を保つ手段だと信じていたし、むしろ、暑い・寒い・痛い・窮屈をちゃんと「我慢」できている自分が好きだった。それがおしゃれを気取る者の矜持とさえ思っていた。
おしゃれ優先、心地よさは二の次。その価値観が転換したのは、子育てだった。目まぐるしい日々のなかでどんどん優先度が下がっていく、おしゃれのための「我慢」。おしゃれよりも、動きやすさや汚れの落としやすさが、まず先。自分の保ちかたが変わっていくのは少し寂しくもあったけれど、このときに「我慢」しなくても自分らしくいられる心地よさに出会えたのは、財産だ。「水は通さず、空気や水蒸気は通す」ゴアテックス風にいうと、「我慢は通さず、心地よさは通す」といったところだろうか。
そして子育てもひと段落した今、服選びの基準はまたひとつカーブをきった。「おしゃれは我慢」「おしゃれよりも心地よさ」を経て、「おしゃれも心地よさも」が今の気分。どんなにトレンドといわれようとも、蒸れる素材や窮屈なシルエットを「我慢」する日々にはもう戻りたくない。かといって、まちへ繰り出すときは背筋を伸ばしたいから、おしゃれ度外視ではつまらない。
都会的な佇まいの「呼吸」しやすい服で、雨の日も気持ちをカラッと乾かしていこう。雨をはじいて湿気を放出するゴアテックスのブルゾンは、わたし自身をも、過剰なものはやさしくはじいて、心地よい風通しをたずさえた存在にいざなってくれているような気がする。
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