海や山をいつも感じる暮らしのフロア 本館6階 Feel the Wind

2025.05.30

心の穴ぽっかり、満ちていくじんわり。

陽が気持ちよく射しこむカフェ。それとは対照的に、ランチを囲む友人2人とわたしは、皆それぞれに少しずつ元気がなかった。「このキャリアチェンジ、合っていたのかな」「あの場面でどういう言葉を発していたら、彼を手放さずに済んだのだろう」「子どもが巣立って、家の中が静かすぎて寂しい」――半年前に集まったときは、仕事やプライベートの充実、ひと段落がつく子育てにあんなに意気揚々としていたのに。揃いも揃ってのアップダウンが、なんとも可笑しい。「気が合うねぇ」とこの可笑しさをケラケラ笑って、ひととき、心の回復をはかろうとした。

「回復(リカバリー)」という言葉は、なにかを取り戻すという意味だ。しかし、わたしたちはそれぞれに、大事なものをなくしてしまったような、心にぽっかりと穴が空いた感覚を味わっている。取り戻すと言ったって、穴になにを入れたらいい? 「こういうときはさぁ」。食後のコーヒーを飲み終える頃、友人が言い放った。「あたらしいことを始めなきゃ!」

カフェを出て友人たちと別れ、時間が空いていたわたしは、百貨店の中にある観葉植物ショップにふらりと立ち寄った。以前から前を通り過ぎるたびに気になっていた、洋服が並ぶ一角に突如現れる緑いっぱいの空間。先ほどまでいたカフェに降り注いでいた陽の光と、友人が発した「あたらしいこと」が合わさって、植物を育てるのっていいかもしれないと閃いたのだ。

植物を育てるのは初めて。正直、自分が長く面倒を見られる自信がなくて、ずっと見送っていた。でも、なんだか今は、面倒をかけられて、必要とされることの温かさを感じたい。頼られることで湧いてくる小さな幸せで、ぽっかり空いた心の穴を満たしたい――

店員さんの話によると、店頭に並ぶ鉢植えの多くは、園芸農家さんが形や枝ぶりにまで気かけて育てたものだという。ありのままに任せるのではなく、ひとの手で丁寧に仕立てられてきた植物たち。誰かの支えや時間の力を借りて育ってきたその健やかな姿が、まずもってエネルギッシュだ。よーし、わたしも積極的に感化されていこうではないか。

花に花言葉があるように、植物にもそれぞれ託された意味や象徴があるらしい。店内の鉢植えをどんどん紹介してもらううちに、わたしは一鉢のモンステラと目が合った。葉に穴が空いている独特の形が特長のモンステラは「先を見通す」といわれたり、また、つるを伸ばして成長する様子から「つながり」の象徴ともされるそう。

家に迎えて数週間、いま、部屋の片隅でモンステラはゆったりと葉を広げている。朝起きて、霧吹きで潤すのが日課になった。モンステラの葉がつややかに息づいているのを眺めながら、満足げにわたしもコップ一杯の水をからだに流し込む。水がからだに沁み込んでいくのと同時に、モンステラとの小さなやりとりから生まれる愛しい気持ちが、ぽっかり空いていた心の穴に着々と貯まっていくのも感じる。先行き不透明で立ち尽くしていた数週間前の喪失感は、だいぶ回復してきた模様。「先を見通す」モンステラのおかげだ。

about her. green house
大阪・箕面にあるライフスタイルショップ「about her」が展開するコンセプトショップ。店内はブランドのアイコンである植物によって力強く、生命力のある空間に仕上がっており、美しい植物のほか、植物のある暮らしに寄り添ったライフスタイルアイテムなども取り揃えられている。それぞれの植物がもつストーリーや性質、生育の背景などをスタッフに聞きながら選ぶのも楽しい。植物を育てる喜びが、毎日を豊かにしてくれるはず。
■売場
本館6階 アバウトハー グリーンハウス
フロアマップ

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