春はベランダ。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて(現代語訳:だんだんと白んでいく山際の空が少し明るくなって)……と清少納言を気取りたくなるくらいに、早朝の空気が気持ちいい季節がやってきた。パジャマの上に一枚羽織り、靴下を履くかどうかはその日の気温次第。リビングの掃き出し窓の脇に据え置いているグランドチェア(アウトドア用のローチェア)をベランダに持ち出し、身を預ける。読みかけの本を開くこともあるけれど、たいていは、鳥のさえずりを聴きながら、ただただ空を見上げている。我が家のベランダは東を向いてはいないのだけど、近所のマンションや家々、そして遠くに大きく臨む六甲山が夜明けとともに陽の光で照らされていくさまは、まさに「いとをかし」である。
ベランダは、わたしにとって一番近い「外の世界」だ。リビングの延長でありながら、ここに座るだけで、光の揺らぎや風の流れ、屋外の開放感を感じることができる。冬の肌を刺すような厳しさから一転、春の風はやわらかい。目覚まし時計のように一気に起こすのではなく、寝ぼけ眼のわたしの頬にやさしく触れて、からだと心に「おはよう」を伝えてくれる。この「おはよう」に応えるように、からだにはエネルギーが満ち、心はこわばりがほどけていく。
春の風のようにやさしいものに触れると、自分の内側にこわばっていたものがスーッとほどかれていく。「触れる」という行為には、静かだけど深い力があるなぁと思う。「こわばり」は、からだだけでなく心にも溜まる。日々の暮らしのなかでわたしたちは知らず知らずのうちに、がんばったり、気を張ったり、誰かの期待に応えようとして心に力を込めている。それは必要なことだけれど、続けていると、どこかで息が浅くなったり、自分の本音が見えなくなったりする。頬にあたるやわらかな風が、そっと「こわばり」をほどいてくれるのだ。
そんなふうにベランダで過ごすひとときの椅子には、アウトドア用のロースタイルのグランドチェアがちょうどいい。地面に近い高さで腰をおろすと、視界がぐっと下がり、空が広く感じられるから不思議だ。足を投げ出して座れば、心までほどけていくような心地よさ。暮らしの延長にある「外の世界」としてのベランダには、ちょうどいい気軽さと包容力がある。創業70年の家具メーカーが手がけるアウトドアギアブランド「IKIKI」のグランドチェアは、あぐらがかけるほどの幅広の座面に厚手のキャンバス地が組み合わさり、格別の座り心地だ。フレームが木製なので、リビングにも馴染む。もちろん、使わないときはコンパクトに分解して収納できる。
春の風に触れる――そのシンプルな体験で心がほどけるのは、わたしたちが本来、自然とともに生きているからかもしれない。山や川へ出かける機会はそう多くなくても、小さな自然の気配は、気づけばそこにある。大げさなことをしなくてもいい。今朝もまた、わたしはベランダでグランドチェアに身を委ね、風にそっと撫でられる。
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