心地よさ。それは、暮らしに欠かせない感覚のひとつだと思う。表面には見えにくいけれども、確かにそこにあって、わたしをそっと包み込んでくれる、小さな幸せのようなもの。目に見えないゆえに、失ってはじめて気がつくことも少なくない。
たとえば、毎朝使っていた質感も重みも大きさもちょうどいいパン皿が割れてしまった、木々がうっそうと生えたお気に入りの散歩道が公園のリニューアル工事でキレイに様変わりしそう、肌寒くなって昨年の秋冬に重宝していた肌着を引っ張り出したら襟ぐりがでろんとくたびれていた―――些細な喪失が、思いのほか心をざわつかせる。わたしたちは案外、ささやかな「心地よさ」で心のバランスを保っているのかもしれない。決して派手ではない「心地よさ」が積み重なって、穏やかな毎日が紡がれていく。
いま挙げた3つの喪失はいずれも最近わたしに起こったことなのだけど、とくに3つめの長袖の肌着については寒さが本格化しないうちに「心地よさ」を回復したい。それなのに、同じものを新調しようと昨年購入したお店を訪れたら、「(材料事情や価格面で)今年はつくっていないんです」と言われてしまった。これは困った。
肌着は言わずもがな、直接肌に触れる衣服だ。誰かに見せるための服ではなく、わたしのいちばん近くで心と体を包み込んでくれる存在。だから、着心地がその日のムードを大きく左右する。ちくちくしていたら心と体がどこか居心地わるい一日になるし、見た目がくたびれていたらいまいち気持ちがシャキッとしない。触れるという行為は、目には見えないけれど確かに感じられる「心地よさ」の源泉なのだろう。
肌触りのいい肌着を探していたら、「Hight Flutter」のRMYNシリーズに出会った。RMYNという名前は素材のラマヤーナという糸に由来しているのかしら。ラマヤーナは、「綿の宝石」とも呼ばれる世界最高級のコットン「スビン綿」からつくられた糸。その糸を低速編み機でテンションをかけずにゆっくりしっかり編んだRMYNシリーズは、柔らかな着心地と、体の一部のようなフィット感をまとうことができる。
着心地のいい肌着。誰に見せるわけでもなく、自分のためだけに選ぶ贅沢が、ここにある。わたしの暮らしを「心地よさ」で静かに支えてくれる存在感。「Hight Flutter」は老舗ニット工場が展開するブランドなので、衣服としての耐久性はもちろん、買い足したり数年後に買い替えたくなったりしたときにもちゃんと存在してくれているだろう安心感もうれしい。これからいつも、わたしのいちばん近くにいてね。