ひと花咲かせる、という言葉がある。何かの成果をあげて、それが周囲に認められて、一躍時の人になる。寄せられる注目のまなざしが永く続くものでないことは、承知の上。花だっていずれ散るもの。それでいいのよ。ううん、それが、いいのよ。どうせ散り去るなら花なんて育てなくていいじゃない、とはどうしたって思えない。散る未来がわかっているからピークである「今」を愛でる気持ちもひとしおになるし、なんといっても、満開の花は、生命力がみなぎってキレイだもの。
ああ、そうか。ひと花咲かせる、と書きはじめたときに、なんでわたしは花が咲くとうれしくなるんだろう?とふと思ったのだけど、花の生命力やその躍動感に触れることで、わたしの「生きる力」――よーし!やるか!と腕を振っちゃう気持ち――が呼び覚まされるからかもしれない。調べてみると、国立機関の研究でも、花を鑑賞したり花に触れたりすると、体内のストレスホルモンの値が低下したり、ネガティブな感情が癒やされることが実証されているという。花ってスゴイ。
そういえば、文字どおりひと花咲かせて、人生にもひと花咲かせたおじいさんがいたな。昔話の『花咲かじいさん』だ。主人公のおじいさんは、「ここ掘れワンワン」からはじまるご縁で、冬のある日にふしぎな灰を手にした。風が吹いておじいさんがかかえた灰が庭にパーッとまかれると、灰をかぶった木々がみるみる花を咲かせ、あたり一面が春景色に。喜んだおじいさんが「枯れ木に花を咲かせましょう」と村のあちこちを花ざかりにする姿がたまたま通りかかったお殿さまの目にとまって、ほめられて、ご褒美をたくさんもらった――そんなお話。
花咲かじいさんのように枯れ木に花を咲かせることはできなくても、朝、お湯をそそぐだけで、わたしたちもかんたんに「花を咲かせましょう」をできるグッズがある。それが、まちのシューレのオリジナルブレンドティー『目覚めのお茶』。バラのつぼみが、阿波晩茶(茶葉を乳酸菌で後発酵させた徳島県特産のお茶)にブレンドされている。なみなみのお湯がそそがれた透明のポットでたゆたうバラのつぼみたちは、正確には咲いてはいないのだけれども、もう咲いているといっていいでしょう!というほどツヤと香りを放つ。
目覚めに花を咲かせましょう。
これから一日がはじまろうというタイミングで、ひと花咲かせちゃう。正確には咲いてはいないのだけど(大事なことなので二度言います(笑))、視覚と嗅覚で「咲かせましょう」を達成しちゃう。起き抜けでまだ何も成し遂げていないけれど、先に達成感を味わっちゃう。この達成感は、「明けましておめでとう」や「誕生日おめでとう」に込められた「いい1年になりますように」のように、「いい1日になりますように」のお祈りになるんじゃないかしら。
ちなみに、オリジナルブレンドティーにはもうひとつ、カモミールがほうじ茶にブレンドされた『おやすみ前のお茶』もある。一日のおわりにもうひと花咲かせるのも、いいかもしれない。