古代から「言霊(ことだま)」といって、言葉には神秘的な霊力があると信じられてきた。その霊力によって、発した言葉が現実になるというのだ。だから、私はピンチに遭遇したとき、いつも「すべてはうまくいっている」という言葉を唱えるようにしている。ある精神科医が書いた本のタイトルにもなっているこのフレーズに、これまで何度救われてきたことか。
たとえば道に迷ったときも、「すべてはうまくいっている」と唱えて冷静になれば、大抵の場合はちゃんと目的地にたどり着ける。なんなら迷い込んだ道でステキなお店を発見して、ずっと探していた物に出合えるなんてサプライズも。そうしたらさっきまでの不安はどこへやら、「私の人生、なんてうまくいっているの!」と小躍りしたくなったりして(笑)。
この前は残業で遅くなり慌てて夕食の支度をしていたら、もう少しで肉じゃがが完成というところで醤油が切れていることに気づいた。スーパーもコンビニも、気軽に走って行ける距離にはない。どうしよう……一瞬、頭が真っ白になった。でも大丈夫、「すべてはうまくいっている」。そうつぶやいて、私は肉じゃがの鍋にみそを投入した。これが子どもたちに「おいしい」と大好評。以来、「みそ肉じゃが」はわが家の定番メニューになった。
えっ?そんなのたまたまうまくいっただけじゃないかって?うーん、そうかもしれないけど、言霊が働いているって考えたほうがなんだかロマンチックじゃない?それに何より、ピンチのときに拠りどころとなる言葉があるのは、心強いものなのですよ。
拠りどころといえばもう一つ、私がふだんから頼りにしている物がある。それは、クジラのマークがプリントされた、「JIB」というブランドのトートバッグ。ヨットのセイル(帆)生地でつくられているこのバッグは軽くて丈夫。鮮やかな発色でメインバッグとしてもお洒落に使えるし、エコバッグとして忍ばせておけば、買い物したときや荷物が増えたときに大活躍してくれる。レジャーに出かけて子どもがどろんこになっても心配無用。汚れた服などもそのまま放り込んで持ち帰り、バッグも一緒に洗濯機で洗えるから大助かりだ。
しかもこのバッグ、ロープを通す穴が付いていて、いざというときレスキューにも使えるという優れ物。バッグの持ち手に足を通して高いところからロープで降りたり、川で中洲に取り残された人にバッグを投げてロープで岸まで引っ張ることもできる。使い方はちゃんと学ぶ必要があるけど、自分や人のピンチを救うことができるなんて頼もしいではないか。
それにね。JIBはもともとはマリングッズのセレクトショップ。それが移転オープンの日に泥棒が入り、商品をすべて盗まれたそう。そこで急きょ、残っていたミシンとヨットのセイルでバッグをつくったのが今につながっているんですって。すっからかんになったお店を見て、JIBのオーナーが「すべてはうまくいっている」と言ったかどうかはわからないけど、まさにピンチを救ったバッグというわけ。このバッグと言霊があれば、私は何でも乗り越えられる気がする。なーんて、ちょっと大袈裟かな。