メイクをするのはきらいじゃない。いろんな自分になれるから。たとえば仕事に行く日なら、きちんと感があって派手すぎないブラウンをベースにしたメイク。はじめましての人に会うときは、オレンジをアクセントにすることもある。なんでもオレンジには、親しみやすい印象を与えて相手の心を開く効果があるのだとか。ちょっぴり人見知りなわたしにとっては、相手と仲良くなる秘策でもあるのだ。たまにドレスアップしてディナーに出かけるときは、もちろんメイクにも気合いが入る。アイラインを太めにひいて、ラメ入りのパウダーで輝きをプラスすれば、「いつもと違う自分」に気分も上がる。わたしに限らず多くの女性は(最近は男性も?)、メイクをすることで、なりたい自分になることを楽しんでいるのではないだろうか。
そういえば大学のとき、授業で「ペルソナ」について学んだことがある。当時の先生には申し訳ないけど、詳しい内容は覚えていない(笑)。でも、教科書に載っていた白塗りに装飾が施された仮面の写真だけは、強烈に印象に残っている。あらためて調べてみると、ペルソナはラテン語で仮面という意味。スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングによって、「人間の外的側面(周囲の人に見せる自分)」を表す心理学用語として使われるようになったそうだ。
周りにどう見られたいかを意識して、仮面をつけるのは決して悪いことではないと思う。だからこそ、わたしはなりたい自分に合わせてメイクを楽しんでいる。ただ、毎日メイクをしてたくさんの人に会っていると、ふと思ったりもする。「あれ?素のわたしってどんな人間だっけ?」と。
今日は久しぶりになんの予定もない休日。家族もそれぞれ出かけていった。妻の顔や母の顔でいる必要もない。よーし!たまには何の仮面もつけず、素のわたしで過ごしてみるか。
まずは朝からシャワーを浴びて、全身を洗い流す。お気に入りのヘアケアアイテムで髪もリセットしよう。やさしい成分にこだわって選んだこのシャンプーとヘアパックは、髪をコーティングしてきれいに見せるのではなく、純粋に汚れを落として本来の輝きを引き出してくれるから、飾らない素のわたしに戻るにはぴったりだ。あとに残りすぎない爽やかな香りも、今の気分にちょうどいい。
シャワーを終えたら、顔も髪もすっぴんのままソファにごろんと横たわる。傍にはレモンを浮かべた炭酸水。細かい泡がきらめく透明な液体をゴクゴク飲むと、体の中まで洗い流されてピュアな自分になれる気がする。
さて、このあとは何をして過ごそう。とことん素のわたしになるにはどうすればいい?凝りかたまった体を解きほぐすために、ストレッチでもしてみようか?大好きなお笑いの動画を観て、誰の目も気にせず笑いころげるなんてどうだろう?いや、むしろ泣ける映画を観て「涙活」するのもアリかな?
そんなことをあれこれ考えていたら、いつの間にかうたた寝していた。おなかがグーッと鳴った音にハッとして目が覚める。ああ、これが正真正銘、素のわたしだ!そう思ったらなんだか笑いがこみあげて、自分が愛しく思えてきた。