海や山をいつも感じる暮らしのフロア 本館6階 Feel the Wind

2023.09.26

ボタンの誓い。

朝起きて、シャツを羽織りボタンに手を掛ける。そしてひとつひとつボタンを留めていく。このシーンが私は好きだ。右手の指先でボタンをつまみ、左手でボタンホールを確かめながらゆっくりと穴に通す。寝ぼけていてもこの時ばかりは意識がきりっとする。着替え前の自分に句読点を打つ、小さな儀式のようだ。
長年気に入っている、上質な生地で定番の形を作り続ける外国ブランドの白いノースリーブシャツがある。美しいギャザーが入ったそのシャツには貝ボタンが並んでいる。シンプルなデザインながら貝がきらめく美しさは、ブランドの気高さを物語り、ボタンを持つ手もほんの少し緊張する。「そう、いつだって神は細部に宿るのよ」と語りかけられている気持ちになるのだ。「そういうことを大事にできる人間でいたい」。祈りのようなものを込めながら背筋を伸ばしてボタンを留める。

同じような白いボタンが並ぶシャツでも、また違う心持ちになることもある。デニムが有名な倉敷で、たまたま入ったお店で目に入ったオリジナルシャツ。深い海のようなブルーのデニム生地のシャツについていたのは真っ黒のボタンだったけれど、「この青には透き通るような白のボタンをつけたい」とお店の人にわがままを言ってボタンを分けてもらった。全て家で付け直すのは結構な作業ではあったが、厚みのある存在感抜群の真っ白なボタンがボタンホールから顔を出した瞬間、シャツの顔がキリッと端正になる。「一人だけで輝くのではなく、誰かを引き立てるのもまた素敵な生き方」。一人でがんばりすぎていた頃の自分を思い出し、そーっと呟いてみる。

ボタンを留める行為。それは私にとって、自分との対話の時間なのかもしれない。
私という内を外から眺める瞬間、私は自分の存在を確かめる。大袈裟にいえばそんなところだろうか。
ボタンはボタンでもこちらはちょっと変わった皮のボタン。薄いストライプが優しくなびくシャツワンピースについているのは野生の鹿皮から作られたボタンなのだ。鹿本来の肌の色で仕上げた野生鹿革を二重に貼り合わせボタンの形に切り抜いたそのボタンは、繊細ながらおおらかな佇まい。ワンピースを着て襟元のボタンに手をかけると柔らかく手に馴染む。ボタンが通るのを待っているのは同じ生地でつくられた、小さなループ。入るのかしら、というくらい小さな輪っかにゆっくりとボタンを通す。その瞬間、ボタンが見せるしなやかな姿に私は誓う。「物事を素直にうけとめる、やさしさとほほえみを」と。

boga boga Loopline 「san diego Long」ワンピース
19,800円(税込)
【ih&blvd.KOBE(ハイカラブルーバード神戸)】
およそ20年に渡りジビエ振興事業に取り組むメリケンヘッドクォーターズのパイロットショップ。サスティナブル、エシカルな取り組みと製品を展開。「ニホンジカまるごと1頭有効活用のパイオニア」として兵庫県産野生鹿革製品を揃える。「ひょうごクリエイティブビジネスグランプリ優秀賞」 「第1回神戸SDGs表彰功労賞」受賞。
【boga boga Loopline「san diego Long」ワンピース】
生地違いで毎シーズン出ている、ブランド定番のワンピース。鹿の皮を塩と菜種油で揉み上げ天日にさらして仕上げる「姫路白なめし」という技法で加工して作られた野生鹿革ボタンを、襟のワンポイントや両袖、両裾などに使用。他にも一枚仕立ての襟や、ボタンを外してふわりと開く胸元のパターンなど、細部まで技がちりばめられている。清涼感のある爽やかなピンストライプの綿麻コードレーンは薄手でサラッとした肌ざわりで、夏から秋まで長く楽しめるのがうれしい。
■売場
本館6階 ハイカラブルバード神戸
フロアマップ
記事一覧
次の記事

Read More

Kobe Style World