愛が溢れるほどに満ちた暮らしのフロア 本館5階 Affection for Life

2026.03.31

ランプの精は、いなくても。

3月の終わり。コートはもうしまったけど、寝起きにパジャマの上に羽織るガウンはフリース素材。朝の空気はまだ少し冷たい。窓を開けると、やわらかな光と一緒に、冬の名残のようなひんやりとした風が入ってくる。このあいまいな季節が、わりと好きだ。何かが終わり、何かが始まる。その境目にわたしもそっと立っているような気がして、少しだけソワソワする。

どこか上の空な朝に、わたしを現実へ引き戻してくれるのが「朝食」だ。目覚まし時計を止めて顔を洗い、炊飯器のふたを開ける。ふだんの朝食は、湯気の立つ白ごはんと、お弁当用のおかずの残り。昨夜のきんぴらや、焼き鮭のほぐし身。派手さはないけれど、堅実で、地に足がついている感じがする。季節がどんなに揺れていても、お茶碗の重みは変わらない。箸を手に取り背筋を伸ばし、文字通り足の裏をちゃんと床について、さあ、いただきます。

一人暮らしのキッチンは狭くて、炊飯器と電子レンジで棚はほとんど埋まる。トースターを置く余白なんて、長いあいだ考えたこともなかった。ここはパンのまち、神戸。パンは好きだけれど、食パンを焼くならフライパンで十分だと思っていたし、とくに困ったこともなかった。

それなのに――

先日、ひさしぶりに実家へ帰った。母はあいかわらず朝が早く、わたしが起きる頃にはキッチンに立っていた。手際よくコーヒーを淹れ、果物を切って大皿に盛り、ダイニングテーブルの上にバターやジャムを数種類並べる母。流れるように家族の朝食を用意する姿は、わたしが実家で過ごした学生時代とほとんど変わらない。ほどなくして、あの香りがテーブルにまで届いた。

トーストの匂い。その香ばしさは、なんともいえない安らぎを連れてくる。実家にいたあの頃の、パンの上でバターが溶けるのを待っていたのどかな時間や、玄関でバタバタと「いってきまーす」を言うとキッチンから返ってくる母の悠長な「今日もたのしく過ごしてきてねー」の声。なんでもないようなことにたくさん守られて「平穏な暮らし」が成り立っていたんだなぁと、懐かしさがこみあげた。

炊き上がったごはんの香りも食欲が湧くけれど、トーストのそれもなかなか優劣つけがたい。自宅に戻って、思いきってトースターを買った。石油ストーブでお馴染みのアラジンの、1枚焼きのトースター。アラジンといえば、魔法のランプである。ランプをこすると精霊(魔神?)が現れ、持ち主の願いをかなえてくれるあの物語。もちろん、トースターのつまみを回してもランプの精は現れないし、「今日も仕事が全部順調に終わりますように」と願いつつ、そこは現実的に考えている。ただ、トーストをするという行為には、ランプをこするのに通じる感覚がある。つまみを回せば、白色だった食パンが黄金色に向かっていく。わたしのささやかな動作で、確実に状況が変わっていく。

トースターは、棚にスペースがなくて、ダイニングに面したキッチンカウンターに置いている。ダイニングからトースターの背面が見えてしまうけれど、置いてみてびっくりした。背面に大きくランプのロゴマークが描かれているの! むしろ、ここに置くのが正解なのでは。生活感どころかちょっとしたオブジェみたいでサマになるし、気が晴れない朝も、ここに食パンを入れたら心安らぐ匂いがたちのぼり、こんがり焼けたトーストができあがることを忘れないでいられる。

劇的な奇跡は起きない。ランプの精も現れない。それでもパンはちゃんと焼ける。季節はゆっくりと次へ向かい、わたしの暮らしもまた、少なからずかたちを変えていくだろう。そんなとき、変わらない「朝食」は、足元を思いのほか安定させてくれる。アラジンがランプをこするように、わたしはアラジンでパンを焼こう。

アラジン
グラファイトトースター(1枚焼き)
15,180円(税込)
石油ストーブで知られるアラジンが手がけるオーブントースター。丸みを帯びたフォルムや、どこか懐かしさを宿すカラーリングが、長年愛され続けてきたストーブの佇まいを彷彿とさせる。特許技術「グラファイトヒータ」を搭載し、わずか0.2秒で発熱するのが特長。短時間で一気に焼き上げることで、水分を逃さず、外はカリッと中はもっちりとした食感に仕上げる。コンパクト設計で一人暮らしのキッチンにも置きやすく、シンプルな操作性も魅力だ。クラシックなデザインと背面のランプロゴが、空間のアクセントとしても映える一台。
■売場
本館5階 グッドキッチンカンパニー
フロアマップ

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