
子育てをして初めて知ったことのひとつは、子ども服のサイズアウトの早さだった。生まれてほどない春先に「まだブカブカだね」と袖を折って着せていた長袖のロンパースが、秋にはピッタリで、そして冬のある日に気づけばツンツルテンになっている。短くなった袖口から肘下が大きくにょきっとはみ出し、本人は気にしてなさそうだけど、どうにも見た目に寒そうだ。この成長スピードは赤ちゃんだから?と思っていたら、全然ちがった。小学生になっても、なんだかんだと毎年サイズアップし続けている。
そんななかで、サイズアウトするたびにクローゼットに迎え直している定番の服がある。シンプルなシルエットに、カジュアルさと上品さがミックスした黒色のカーディガンだ。初めて着せたのは、よちよち歩きを始めた頃。額の汗や頬の紅潮のぐあいから羽織ものとしてサッと脱ぎ着をさせやすく、ジッとしていられない子ども相手に手早くパチパチパチッと留められるスナップボタンもありがたかった。以降、ジャブジャブ洗濯してもフニャッとへたらない仕立ての良さと褪せない色合いが、公園あそびからお呼ばれや法事のオケージョン使いまで第一線を張ってくれて、何着もサイズアップさせながら重宝している。
家族のアルバムを開くと、保育園の入園式、公園のジャングルジムのてっぺんでピースサインをしている姿、親族が集まったときの集合写真――どのページにも1枚は映り込んでいる、同じデザインのカーディガン。カーディガンに着目してアルバムをめくると、2~3年ごとにブカブカ→ピッタリ(→ツンツルテン)を繰り返していて、サイズアウトは子どもの成長そのものだなぁと思う。
子どもは昨日できなかったことが今日できるようになり、昨日は手をつなぎたがっていたのに、今日はもう走っていってしまう。服が小さくなっていく速度は、いつだって親の気持ちの準備を追い越す。親にできるのは、その背中のシルエットを見守りながら、ときどきほこりを払ってあげることくらいだ。
今年ピッタリサイズの、カーディガン。このカーディガンもいずれ小さくなる。来年は着られるかしら。年齢的にも、「親が用意したカーディガン」をすんなり着てくれるのは、そろそろ最後かもしれない。胸の奥がかすかに波立ちながら、でも同時にうれしい気持ちも湧く。わが道を行くゴーイング・マイ・ウェイならぬ、ゴーイング・マイ・ウェア――自分が好きな服を、自分の流儀で。子ども自身が服を選び、靴を選び、自分の世界を広げ、自分だけの景色を見つけていくのは、素晴らしいことだもの!
うちの子にとって、このカーディガンは物心がついた頃から「親が用意したカーディガン」であり、おそらく、アニエスベーのものであることを認識していない。おとな用に同じコットン素材の、同じデザインのカーディガンが50年前から存在することも、知らないだろう(歴史としては、おとな用から派生してキッズカーディガンが生まれた)。これからゴーイング・マイ・ウェアを突き進み、いつの日か、お店でおとな用のカーディガンと「え! 子どものときに着てた、これ!」と巡り合ってくれたらおもしろいな。そのときには、「じつは、ペアルックになるのが気恥ずかしくてあなたの前ではほとんど着ていなかったけど、お母さんもアニエスベーのカーディガンを持っているのよ」と着て見せよう。
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