
「わたしっぽいけど、わたしが自分では買わなさそうなモノがいいな。”消え物”ではないモノだと、なお嬉しい」。引っ越し祝いのリクエストを尋ねたら、長年の友人からこう返ってきた。そうきたか。うーん、困った。この時点でいったん、お菓子やお酒は候補から除外。モノ……ねぇ。ある程度年齢を重ねたわたしたちは、ひととおり、身の回りのモノを持っている。とくに彼女は「とりあえず」で選ばないひとなので、いわゆる生活用品は、ながく使い続けられる(使い続けたくなる)モノが揃っている。若い頃ならお鍋やタオルといった実用品を贈ったけれど、そういったモノも、今回はちょっとお門違いのようだ。
何がいいかしら……家族が起きてくる前の朝のひとり時間に、お茶を淹れながら頭を巡らす。いまの時期、朝5時台の窓の外はまだ真っ暗。窓を閉めきっているから、風の吹き抜ける音も、虫の声も聞こえない。外の世界がしんと静まりかえっているぶん、家のなかの小さな音がよく響く。冷蔵庫の低い唸り、お湯が沸いたときの「ぶくぶく」、火を止めて湯呑みにお湯を注ぐときの「とくとく」、急須の蓋を開けて置くときの「ことん」――ほどよく耳に入ってくる音たちが、あれやこれやと巡る考えのアクセントになってくれる。
あ、思い出した。朝型のわたしとは対照的に彼女は宵っぱりなのだけど、いつだったか「冬の夜の“どっしり感”っていいよね」と二人で盛り上がったことがあった。単に冬の寒さや暗さが作りだしているわけではない“どっしり”。外からの音の少なさや、あたたかい飲み物をからだに流し込んでホッとお尻が椅子に沈み込でいく感覚が、部屋の空気に心地いい重みを持たせているんだろうね、と着地した記憶がある。彼女は「夜更かしがはかどる」と言い、わたしは「うんうん、早起きのお得感が増す」と応えた。
そんな記憶が蘇り、いま、わたしの目の前には、淹れたてのお茶の湯気がのぼる急須。そうだ。引っ越し祝いは急須がいいかもしれない! 冬の夜長のティータイムにぴったりな、保温性の高い急須。南部鉄器の急須なら、保温性が高いうえに、その重厚さやあたたかみが冬のどっしり感にもよく似合う。しかも、カラーバリエーションも豊富。ついつい無着色のオーソドックスなものを選んでしまいそうなところだけれど、彼女からのリクエストは「わたしが自分では買わなさそうなモノ」だもの。モノトーンカラーがメインの彼女のテーブルウェアのなかで、ピンク色は華やかに映えるはず。
重みのあるものを選ぶことで、軽くなる心がある。鉄製の急須は重みがあるぶん、扱いが丁寧になり、動作も呼吸もゆっくりになるんじゃないかしら。そのリズムが、心を静かに落ち着かせる。いつまでもあたたかいお茶を湯呑みに注ぎながら、ひとり時間を、パートナーや家族とのティータイムを、楽しんでほしい。夜更かしは、ほどほどにね。
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