愛が溢れるほどに満ちた暮らしのフロア 本館5階 Affection for Life

2025.09.30

受話器、シュワッチ。

先日、中学生の娘と百貨店のおもちゃ売場を訪れた。親戚が出産したので、そのお祝いを選びに行ったのだ。「なつかしい! これ、うちにもあったよね」と、定番ブランドの歯がためやガラガラを見て回る娘。親戚や友人がかつて生まれたての彼女に贈ってくれたのと同じおもちゃたちを前に、あそんだ記憶が蘇ったのか、当時の写真に映っていて見覚えがあるのかは、わからない。でも、そう言ってもらえるのは親としてうれしいなぁ、時間をまたいで体験を重ね合わせたり記憶を共有できるのが「定番」の良さのひとつだなぁと、しみじみ感じ入る。ほどなくして、娘が「ねぇ、ママ見て! むかしの電話!」と声をあげた。目をやると、そこには黒電話のおもちゃが。

彼女ははしゃいで、その受話器を持ち上げる。「ちっちゃいときに絵本で見て、どんな感じなんだろうってずっと触ってみたかったの~!」。あぁ、そういえば『もしもしおでんわ』(松谷みよ子)や『きょだいな きょだいな』(長谷川摂子)に出てくる電話機は黒電話だったね。「こうやって(ダイヤルを)回すんだね。え、戻ってくるまで次を回せないの? めっちゃゆっくりじゃん」「受話器を置いたときのパフってちょっと沈む感覚、なんかいいね」

「受話器ってことばを知ってるんだ?」。スマートフォン世代には馴染みがないはずの言葉が飛び出して、わたしは驚いた。「うん。ちょっと前までシュワッチだと思ってたんだけど(笑)。小学校に入ってすぐの頃に、ママが、家の電話からママの携帯電話に電話するやり方を教えてくれたでしょ。そのときに言ってたよ。いつだったか読んだ本で『受話器』で『ジュワキ』なんだって分かった」。なるほど、たしかに「困ったことがあったらこうやって電話してきなさい」って教えたっけ。

シュワッチはウルトラマンでしょうというツッコミが喉まで出かかったけれど、あの日の幼い娘には、ピンチに駆けつけてくれるヒーローの変身のかけ声とSOSの電話がリンクしたのかもしれない。そう想うと、言い間違えにも愛おしさが込み上げてくる。

暮らしの道具は、便利さに合わせて進化していく。電話機も、受話器の付いた固定電話からポケットサイズの小さな機械へと姿を変えた。それでも、スマートフォンの画面にはいまも受話器のマークが残っている。実物の受話器を知らなくても「つながる」「助けを呼べる」しるしとして誰もが疑いなく認識しているそのマークを、時代の層が重なり合う小さな記念碑みたいと言ったら大げさかしら。

一瞬のきらめきで子どもを夢中にさせる最新鋭のおもちゃも素敵だが、一方で、家のリビングに黒電話のおもちゃがある風景というのも輝く。かつて「家にあるもの」の定番だった世代から、これから「絵本に出てくるもの」として出会っていくだろう世代までが、時空をまたいで「もしもし」という言葉や受話器を耳に当てるしぐさを共有するとき、暮らしの記憶がほんのすこし厚みを増すはず。

受話器とシュワッチ。10年近くの時を経て明かされた言い間違いだって、近いうちに実家や義実家での話の種になるだろう。そして、何十年か後に娘のこどもとも分かち合えたら幸せだな。

キコテレフォン
イエロー、ピンク、ミントグリーン
各 6,050円(税込)
creative director のKaz*shiomi が「私たちにしか作れない、とびきりおしゃれで、こどもも大人も喜ぶ木のおもちゃを世界中の親子に届けよう!」とスタートしたブランド。子どもたちが安全に遊べること=最も重要なこととしておもちゃ作りに取り組む。世界の厳しい玩具安全基準の試験を第三者機関で受けてクリアしているほか、おもちゃの表面の仕上げには、万が一お子様が舐めてしまっても体に害のない安全な塗料を使用し、日本の食品検査もパスしている。
なつかしいレトロなフォルムのテレフォンは、インテリアとして飾ってもかわいい。付属のコインを入れて“電話をかける”と、受話器を戻したあとにおつりが返ってくる。
■売場
本館5階 マム&ベビーセレクト
フロアマップ

本記事に掲載の商品は、阪急百貨店・阪神百貨店のリモートショッピングサービス「Remo Order(リモオーダー)」にて、ご自宅や外出先からスマートフォンでご注文いただけます。

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