ついこのあいだまで分厚いコートが手放せなかったのが嘘みたいに、もう季節は春本番。不思議なもので、いい歳をした大人になっても、この季節になると決まって新学期を迎える学生みたいな気持ちになるもの。しばらくサボっていた語学学習を再開してみようとか、何か運動習慣を身につけたいなとか、冬のあいだ眠っていたチャレンジ精神や好奇心が、むくむくと頭をもたげてくるのも毎年のことだ。
よし、まずは早起きから始めるんだ。そうわたしは決心する。寒さを言い訳に、ギリギリまでお布団で惰眠をむさぼっていた日々とはオサラバ。時間に追われる暮らしから、時間を生かしきる暮らしへシフトしよう。こうやって意気込むのも、もう何度目かわからないけれど、なにはともあれ、再びわたしの6時起きトライアルが始まった。
まず、朝起きたらすぐに熱いシャワーを浴びる。そしてお気に入りの服に着替えて、身だしなみを整える。そうやって頭と体をきっぱり目覚めさせるのが、朝のスタートダッシュを決めるコツ。間違ってもパジャマのままコーヒーを淹れたりスマホを眺めたりしないこと。キビキビ・テキパキ動いて、分刻みで朝のルーティンをこなし、出勤前にぽっかり空いた1時間は、英語ドリルをやったり読書をする時間にあてるのだ。世間では「朝の1時間は夜の3時間に匹敵する」なんて言われているけれど、やってみるとほんとうにそうだと実感する。朝の過ごし方が、1日の充実度を左右すると言ってもいい。
そして今、意志が弱く怠けグセのあるわたしの早起きトライアルを支えてくれているアイテムのひとつが、「ザ シンゾーン」のベイカーパンツ。ベイカー、つまりパン職人の作業着にルーツをもつワーク系パンツを、都会的に洗練させたスタイルがお気に入りなのだ。どんなトップスにも合うし、スニーカーでもパンプスでもOKだから、朝、コーディネートに迷ったらコレ一択。2色持っていれば、大抵の日はこれで間に合ってしまうんじゃないかと思うぐらい。それにほら、パン屋さんといえば「早起きして働く人」の代表格でしょ。ハリのある生地に身を包むと、あら不思議、寝ぼけた体もスッと支えられて「よし、やるぞ」と気持ちまで前向きになれるのだ。
春眠暁を覚えず……なんて言いそうになる誘惑に負けず、目覚まし時計のベルとともに、布団をはねのける。クローゼットを開けてぱっと目についたシャツとベイカーパンツをひっつかみ、シャワーへ向かう。まるで働きもののパン屋さんみたいに、キビキビ・テキパキ。さ、今日もいい日にしよう。わたしは鏡の中の自分に向かって笑いかける。