新旧問わず、洋画には「ヴァカンス映画」とでも呼びたくなるジャンルがある。とくに多いのは、少年少女が主人公のもの。学校から解放された長い夏の休暇、旅先で思わぬ出会いをしたり(時には淡い恋をしたり)、予期せぬ冒険や事件に巻き込まれたり。日常とは少し異なる時間のなかで、主人公は初めて知る感情を味わって、成長してゆく。そんな姿に、私たちも子どもだった頃の記憶を呼び覚まされ、胸がキュンとしてしまうのだ。
夏が来るたび、この手のものが見たくなってしまうのだけれど、私にとってもうひとつ楽しみなのが、女の子たちのサマーファッション。冬が長く厳しいヨーロッパでは、夏になると誰もが待ってましたとばかりに全身で太陽の光を楽しむ。ヴァカンスを彩るのは、肩を露出させたサンドレスとか、白いショートパンツとか、カラフルな水着とか。ちょっと背伸びしたおしゃまさんぶりがかわいくて、ついスクリーンに目が釘付けになってしまう。
たとえば、10年ほど前のフィンランド映画「オンネリとアンネリのおうち」なんて、眼福だった。仲良しの女の子2人組が、ある日不思議ななりゆきで一軒家を手に入れるところから始まる、ひと夏のファンタジー。
プリンセス気分満載のインテリアや、カラフルな砂糖菓子でいっぱいのテーブル。ピンクの薔薇が咲き乱れる庭。夢のようなおうちを舞台に、一風変わったお隣さんたちを巻き込んで、ひと騒動が持ち上がる……というストーリーなのだけれど、これはもう全編通して女の子の「好き!」がいっぱい詰まった「かわいい」の玉手箱。2人がまとうちょっとノスタルジックなワンピースやエプロンドレスが、底抜けに明るい北欧の夏によく似合って、見飽きることがない。
大人になった私には、もう手の届かない、とびきりキュートなファッション。私の中の小さな女の子が指をくわえて「いいなあ」と呟く。ならば代わりに娘に着てもらうことで、こっそり自己満足するとしようか。
最近見つけたお気に入りは、カリフォルニアポピーの花柄が一面に散らされた、薄手コットンのブラウス。襟元からたっぷり広がるギャザーがチャーミングで、一枚さらりとまとうだけで、大人顔負けのおしゃれさんのできあがり。ちょっとすましてお出かけなんて時にもぴったりだ。まるで、ヴァカンス映画に出てくる女の子みたいじゃない!なんて、私はひとりほくそ笑む。
さて、今年も夏がすぐそこ。わが娘にも思いがけない出会いや冒険が待っているのかしら。小さなうるわしのサマーガール。私にとって最高にまぶしいヒロイン誕生だ。