「神戸出身です」と他府県の人に話すと、「え~、なんだかおしゃれ!」と言われて、ちょっとむずがゆい思いをする。そんな経験をしたことのある神戸っ子は少なくないと思う。海と山に挟まれた異国情緒のある街並みがそう言わせるのかもしれない。そしてもうひとつ、日本でいち早く西洋ファッションが根づいた街だということも見逃せない。
現在、三ノ宮のオアシスとして親しまれている東遊園地をぶらぶら歩いていると、スーツの身頃や袖、ズボンなどをかたどったちょっとユニークなモニュメントが見つかる。これが実は、「日本近代洋服発祥の地」の記念碑ナリ。明治2年、イギリス人カペルが、旧居留地(それも現在の東遊園地あたり)にて洋服店を開業したのがその理由だとか。
歴史に詳しい人によると、神戸港は主にヨーロッパ航路、横浜港はアメリカ航路で栄えたそう。だとすると、シックでエレガントなヨーロッパ仕込みのファッションが、横浜以上に神戸に色濃く根付いたというのも、うなずける話。ソフト帽に蝶ネクタイ。パーマネントウェーブにハイヒール。競い合うようにおしゃれに身をやつした男女が、このあたりを闊歩していたのかしら。そんな風景を思い浮かべると、ちょっとワクワクする。いわゆる「ハイカラ」と呼ばれた人たちだ。
人目を惹くおしゃれさんを見ると、「ハイカラやねえ~」と言う。そんな言葉づかいが生きていたのは、私の祖母や母世代までだろうか。ハイカラってなんだ?と思って調べてみたところ、どうやら明治時代に流行した襟の高い男性用ワイシャツ、high coller(ハイ・カラー:高い襟)から来ているらしい。時には周囲から「ええカッコして」と眉をひそめられながらも、自分のスタイルを貫き、新しい文化を貪欲に吸収した当時のハイカラさんたち。そう、おしゃれは心意気なのだ。
さて、今を生きる私たちは、当時のハイカラさんたちの心意気を受け継いでいるだろうか。おしゃれのカジュアル化が進み、ハレとケの装いの差も昔ほど明確ではなくなってきている今だけど、時にはちょっと気取ってドレスアップを楽しむような、優雅なたしなみはなくしたくない。
折しも、結婚式などのお呼ばれが増えるこれからの季節は、大人だけじゃなく、小さな子どもたちにとっても、おしゃれレッスンのいい機会。けれど、子どもがまだほんの赤ちゃんの場合は、どうすればいいの?なんて声が聞こえてきそうだ。
おすすめは、神戸生まれのベビー服ブランド「レアぺぺ」が8年前からつくり続けている、パーティやセレモニーにぴったりのスタイ&ブルマ。いとも簡単に着せられるのに、たちまちスーツやドレスに身を包んだ小さな紳士淑女ができあがって、あらあら可愛いこと。しゃれ者の系譜を受け継ぐ神戸ハイカラ・ベイビー。こんな心意気を見せつけられたら、周囲の人々も眉をひそめるどころか、目尻が下がりっぱなしになりそうだ