“Look on the bright side!(ものごとの明るい方を見ようよ!)”
これは私が学生時代にバックパック背負って旅したオーストラリアで耳にした言葉。パスポートを宿に置き忘れたまま長距離列車に乗って別の街に移動してしまったり、予定していたバスに乗り遅れてヒッチハイクせざるを得なくなったり、持ち前のマヌケさのせいで「あちゃー!」という場面が何度かあった。でもその都度、明るくフレンドリーなオーストラリア人たちに助けられ、なんとかなってきた。そんな時、彼らが口にしていたのが、上記の言葉だ。もしあなたの旅が予定通り進んでいたら、こんな出会いはなかったじゃない?そう言ってウインクされると、こっちも微笑まずにはいられなかった。
古い格言に、「幸福だから笑うのではない。笑うから幸福になるのだ」というのがあったけれど、私が彼らから学んだのも、そんなふうに生きることがちょっとラクになる、ユーモアの効能だ。
そういえば世界中がコロナ禍に見舞われたあの2020年も、ユーモアを忘れないオージー精神は健在だった。外出自粛を強いられ、近所の散歩やジョギングのみしか許されない日々の中、人々は自然発生的に家の窓や塀に、思い思いのぬいぐるみを飾り始めた。そしてわずかな外出の時間を、「テディベアハント」なる宝探しのレクリエーションに変え、味気ない毎日に小さな微笑みのタネを蒔いたのだ(ちなみに、この場合の“テディベア”はクマのぬいぐるみだけにあらず。要するにぬいぐるみなら何でもOK!という大らかなもの)。
久しぶりにそんなオージー精神のことを思い出したのは、小さなストローマグのおかげだ。若い友だちへの出産祝いを探していた時に出会ったそれは、今から10数年前にオーストラリアの子育てママが考案したものだという。一見ごく普通のストローマグに見えるけれど、ストローの先に可愛いおもりがついていて、中身が少なくなっても、ストローの先がグイーンと曲がって飲みものに届く。おまけに逆流しないストローのおかげで、ひっくり返してもこぼれない。「これなら寝転びながらでも飲めるんですよ」という店員さんの説明を聞いて、「あはは、なるほど!」と笑ってしまった。きまじめな日本のものづくりとは、どこかちょっと違うのだ。
かつて何度かストローマグの中身でバッグを水浸しにしたことがある私としては、「私の赤ちゃん育児期にも、こういうのがあればよかったのになあ」と思わずにいられなかった。ガサツな私にとっては、幼い赤ちゃんとの暮らしは、楽しいことだけじゃなく、「あー、またやっちゃった!」とため息をつきたくなることの連続だった。でも、このウィットの効いた道具は、そんなかつての私みたいなママも「大丈夫よ」と肯定してくれる気がするのだ。
育児期にありがちなちょっとした失敗をプラスに変換して、子育てママ・パパをストレスから救う。ユーモアとは、人生を楽しむ遊び心と創意工夫でできているのかもしれないな。
「肩の力を抜いて、今しかないこの時を楽しんで!」。今も奮闘しているであろう友だちに、このマグと一緒にそんなメッセージを贈ろう。