ちょっとしたものを人に贈るのが上手な女友だちがいる。冷え性の人にポカポカあたたまると評判のバスオイル。料理好きな人にちょっと上等なだしパック。受け取った方がそんなに気を使わないで済む程度の「消えもの」が多いけれど、それがもらう側のツボを絶妙に突いているのだ。そのさりげなさ、きっと人に対する想像力が豊かなんだろうな。
そんな思いを深くしたのは、私がまだ乳飲み子を抱えて育児休暇中だった時のことだ。「元気?最近どうしてる?」と彼女からメッセージが届いたのだけれど、あいにく私は元気とは程遠いコンディションだった。季節の変わり目で風邪を引いてしまい、頭は重いし微熱もある。それなのに目の前の赤ん坊は待ったなし。頼れる人のいない辛さに、ちょっと気持ちまでやられて落ち込んでいたのだ。
「実は……」と自分の状況を打ち明けると、「ちょっと待っててね、今日の夕方、そっちに寄るから!」と彼女。約束どおり、数時間後にあらわれた彼女の両手には、何やらずっしりと詰まった袋が下がっていた。中から出てきたのは、一つひとつラップで包まれたたくさんのおむすびと、可愛らしいベビー用離乳食やおやつのパック。
「おむすびはこのまま冷凍して、食べたい時にレンジでチンしてね」と渡されたおむすびには、具がぎっしり入っておいしそう。聞くと、ツナや乾燥ひじき、乾燥大根葉をお米と一緒に炊飯器に放り込んで炊いたものだそうだ。授乳中の身にはありがたい健康ごはんだ。
「0歳児がいて体調が悪いとなると、ごはん支度の余裕なんてないよね。だから時々こういう具だくさんおむすび、どっさり作って冷凍しておくといいよ。鮭とかサバの水煮缶を使ってもいいし、とにかく手間なしだからおすすめ!おかずとごはんが一緒に摂れるものが冷凍庫にストックされてるってだけでも、安心感があるから。」
私より数年早く出産を経験した先輩ママとしての心遣いが、涙が出るほどうれしかった。さらに私への差し入れと別に、ベビーフードまで用意してくれるなんてすごすぎる。彼女が持ってきてくれたのは、国産の有機野菜や有機米を使った無添加のもの。きちんとした手づくり品質のおかげで、市販品を食べさせる後ろめたさも感じずに済む。
「あなたのことだから、子どもの食事はおろそかにしたくないって思ってるよね。でも子育ては長期戦だからさ、頑張れない日は無理しないで、こういうものの力を借りていいと思うよ。ほんというと、私だってこういうの、ぜーんぶ先輩ママに教えてもらったんだけどね。」
そう言い残して、長居をせずに帰っていく彼女を見送った後、なんだか重かった頭や心が軽くなっているのに気づいた。彼女がくれたのは食べものだけじゃない。あの時感じた「心の余裕」こそ、彼女からの何よりのギフトだった。あれ以来、彼女から伝授された冷凍おむすびと「リトルワンズ」のベビーフードは、わが家の定番になった。そして今度は、私から誰かへ、あんなエールのバトンを手渡す番だな、と思っている。