なんで「風呂」に「敷く」と書いて風呂敷なのか。不思議に思うかもしれないけど、そもそも風呂敷はお風呂に関係ありなのだという。いまは昔、奈良時代のこと。奈良の尼寺・法華寺というところに蒸し風呂があった。スノコの下から薬草などを燃やして煙を出し、祈祷や疫病退治などに利用していた。そのスノコに直に座るとお尻が熱いというのでムシロを敷き、それに流れる汗も吸わせたとか。この風呂に敷いたものが、風呂敷の起こりだという説がある。
一方で、風呂敷という呼び名が生まれたのは室町時代に入ってからのことといわれている。将軍・足利義満が建てた大湯殿(おおゆどの)と呼ばれる浴場を近習の大名衆が利用していた。その際、脱いだ着物が他人の着物と紛れてしまわないよう、じぶんの着物を家紋入りの布で包み、入浴後にはその上で着替えを行った。それが、風呂敷という言葉のはじまりとされている。いずれにしろ、風呂に敷くものだったわけだ。
さて、年末。そして年始。この時期はお世話になった方のところへ、ご挨拶に訪問する機会があるかもしれません。そのときは礼儀として手土産を持参することでしょ。まさか、手にぶら下げては行きませんよね。贈り物を買ったお店が用意してくれたペーパーバッグを利用する方が多いと思います。でも、それでは芸がない。ここはもうワンランク上の粋な気配りと芸を見せたい。そこで、活躍するのが風呂敷だ。ペーパーバッグで渡すのではなく、贈り物は風呂敷に包み、その結びをといてから「なにかとお世話になりまして」と、手渡すのが、古式豊かで由緒正しいご挨拶というものだ。
そこで風呂敷を使うとなると、身に付けたいテクニックがある。モノによって包み方を変えるのだ。中身に合わせて自在な包み方ができることこそ、風呂敷の特長であり、利点なのだから。例えば、お菓子の箱のように四角いものだと簡単ですよね。でも、日本酒の瓶やワインのボトルだと、ちょっと高等なテクニックが必要。瓶を風呂敷で巻いて上で結ぶ。そして瓶の胴をクルッと巻いて正面でギューっと結べば、それは、それは、とびっきりのカッコ良さ。渡された方もシャンと背筋が伸びようというものだ。風呂敷ってものは包むものによって、いろんな包み方がある。GoogleやYouTubeで調べてみると、いろんな包み方を教えてくれますよ。
そして、もうひと声、風呂敷の応援演説。風呂敷は渡された方がほどいて中身を受け取れば、元の持ち主に返ってくる。これぞ、ジャパニーズ・エコ精神。SDGsのシンボルみたいな存在だ。三角形に折って両橋を結んで裏返し残った先端を結べばバッグのように使える。これぞ、まさに、エコバッグだ。
さて、さて。本年もそろそろ結びの一番。大トリが近づいている。そして、明けて新年。そこで思い出す言葉がある。“風呂敷を広げる”であり、 “風呂敷を畳む”という言葉だ。前者は、「実現の可能性があるかどうかはさておき、夢みたいな話をする」というような意味。それゆえ、ときに「大風呂敷を広げる」と言ったりもする。後者には、「起こった出来事の決着をつける」という意味がある。そろそろ1年も終わる。どんな1年でしたか。年の初めに広げた風呂敷どおりに、実行できましたか。できていないアナタは“大風呂敷を広げた”わけだ(笑)。そうならないよう、1年を振り返りながら、この1年をどう畳むか、年のはじめに広げた風呂敷の畳み方を考えたいですね。そして、来年をどんな年にするか、したいのか。新しい風呂敷を広げたいですね。それも良いけど、ここは新しい風呂敷を手に入れて、いつもバッグの中に忍ばせておきませんか。いろいろと生活シーンが変わっていきそうな気がします。
さあ、広げたり、畳んだり。新しい生活スタイルをあなたのものにしましょう。