ピンポーン♩(おっ、来た、来た。)
招待客たちがやってきた。今日はオリーブの木を眺めながら、オリーブオイルを使った料理を食べる「オリーブの木の日」なのだ。オリーブといえばポパイ。だから、今日のドレスコードはセーラ襟の服を着てくること。ポパイといえば水平さんだからセーラー服。そんなギャグみたいな連想ゲームはもう通じないかな(笑)。しかも、ポパイの恋人オリーブのフルネームはオリーブ・オイル。って、知らないよねえ。だって、ポパイは、もう100年近く前のアメリカンコミックだもん。
招待客3人をご紹介しましょう。全員、ワタシを通して知り合った友だちグループだ。K Iは幼稚園と小学校の同級生。もう何年の付き合いになるだろう。それはヒミツだ。歳がわかっちゃう。うちの町内で“まち中華”の店をやっている。じぶんでは“ラーメン屋”と言っているが、なかなかどうして、酢豚、鶏唐揚げ、餃子など人気メニューも多い。KSは仕事の仲間。ワタシの弟子であり後輩でもある。なかなか素敵なデザインをする、敏腕デザイナーだ。KKは大学教員。経済学を教えている。食べることも、飲むことも大好き。金に糸目をつけない食べ歩きが趣味という、ぜんぜん経済的じゃない不経済学者だ。そんな3人に見せるために用意したのが、高さ150センチを超えるオリーブの木の鉢植えだ。しかも実がなっている。
3人をオリーブの木があるリビングに招き入れた。目ざといKIがさっそく見つけて、「おっ、これか。立派な木じゃないか。葉もよく繁っている」と、感嘆の声をあげる。KSが先輩であるワタシを気遣って持ちあげてくれる。「先輩、上手に育てていますねえ。肥料を与えたり、水をやったり、けっこうマメに丹精してはりますねえ」。食通でありモノ知りでもあるKKは、オリーブの木になっている実を見つけて知識を披露する。「オリーブって1本だと実はならないんですよ。ということは、どこかにもう1本あるってことですよね。どこだろう」。
ワタシはどの話にもニコニコと笑顔でうなずく。さ、落語の“子褒め”ならぬ“オリーブ褒め”はこのくらいにして、食事にしようじゃないか。さあ、さあ。と、皆さんをダイニングテーブルへと誘う。そこにはオリーブオイルを使った料理が並ぶ。新鮮野菜のグリーンサラダ、焼き野菜のマリネ、続いて鮮魚のカルパッチョ、魚介のアヒージョ、自家製アンチョビのパスタ、バケットもオリーブオイルをかけていただくのだ。しばらくはお食事タイム。というわけで、旺盛な食欲で食った、飲んだ。食った、飲んだ。
お腹がくちくなったところで、コーヒーカップを手にして全員がオリーブの木のまわりに集まる。KSがまたオリーブを褒める。「ホントに、綺麗な葉っぱだし、それに、こんな美味しそうな実がなっているし」と、葉と実を手でさわる。アレ??と、KSの顔色が変わる。目がシロクロしている(笑)。
「先輩!これって、ホンモノの木じゃないでしょ??」その声につられて、KI、KKもオリーブの木の葉に手を伸ばす。3人が口を合わせて、「ヤラレター」と大きな声を出して、一斉に笑い声が部屋中に響く。「どおりで1本でも実がなるわけだ」と、KK。
「あまりにも良くできたアーティフィシャルグリーンを見つけたものだから、きょうの企画を思いついたんだよ。でも、みんな、たくさん褒めてくれて、ありがとう。料理も美味しかったし、ひさびさに集まれたし、よかっただろ(笑)」
3人揃って「その気にさせられたー!」と、大笑い。「えっ、その木に乗せられただろ」と、ワタシがツッコミ、また笑いが広がるのであった。