Special Edition
2024.9.3
日本画家・
諫山宝樹さんが
描く情感の彩り
伝統と今様を取り入れ、
彩り豊かな日々をご提案する秋の特別イベント。
今回メインイベントにご登場いただく、
日本画家・諫山宝樹さんに、
創作の背景や美しさを感じるもの、
絵への想いを伺いました。
Profile
諫山宝樹(いさやま たまじゅ)さん
大阪生まれ。京都在住。2003年京都市立芸術大学日本画専攻卒業、2005年同大学院保存修復専攻修了。大学院在学中より東映京都撮影所にて時代劇の襖絵等の制作に携わる。2015年に独立、京都にて寺社への奉納や定期的な作品公開、広告等への作品提供など多方面で活躍中。2024年NHK大河ドラマでは平安貴族の衣装人物画を担当。
生き生きした女性や愛らしい唐子…。
今の時代に響く、情感あふれる作品
さらりとまとったきもの姿で涼しげな目線を送ってくる女性たち。おおらかで生命力あふれる絵に思わず引き込まれてしまいます。独特の装束と髪型の唐子(からこ)たちは愛嬌たっぷりで、見ているこちらまで笑顔にしてくれそう…。
情感あふれる作品を手掛ける日本画家・諫山宝樹さん。日本画を目指したきっかけは高校生のときに上村松園の絵を観て衝撃を受けたことだそう。そのお孫さんが教鞭を執っていた大学に入るも、退官後で願いはかなわず。当時日本画の主流となっていた厚塗りの画風にも合わず保存修復へと転科します。
「材料学などを勉強できたのはよかったのですが、自分は大ざっぱなので修理工房などの専門的な修復は向いていない、これは関わってはいけない ! と思って(笑)。でも昔のタッチで描きたい ! それで好きに描ける場所をと思って大学院生のときに東映の京都撮影所に行ったんです」。そこで時代劇で使われる襖絵などの制作に携わりながら、2015年に独立するまで研鑽を積みました。
独立後は京都で寺社への奉納や、広告への作品提供などを中心に多方面で活動。2024年には八坂神社の絵馬奉納、第150回「都をどり」のポスター原画提供などますます活躍の場を広げています。
諌山宝樹さんの作品『酊』。衣擦れの音まで聞こえてきそう…。のびやかな筆使いがインパクトを残す、きもの姿の女性。余白を生かした構図も印象的。
諌山宝樹さんの作品『騎丑唐子図』。湯呑みなどに描かれている唐子文様がこわかったという諫山さん。かわいく描いてあげたいという願いから生まれた絵は、「唐子ちゃん」と呼びたくなる愛らしさ。
先人の絵に学び、模写に打ち込み、
追体験で得られた描く楽しさを実感
「撮影所にたまたま迷い込んだ(笑)」という諫山さん。そこではオーダーを受けながら、江戸城の松の廊下や大奥の御鈴廊下、ときには伊藤若冲の作品など様々な模写を手掛けたのだそう。
「めちゃくちゃカジュアルな感じで『おまえ若冲、描けるか?』って聞かれるんです(笑)。ええっ!? てなりますよね、好きですけど描けるか知りませんよって(笑)。展覧会のシーンだったので本物に見えなくちゃいけないし、しっかり映るものだったので、あのときはめちゃくちゃ頑張りました」
様々な要望に応え、模写をするなかで、発見すること学ぶことも多かったそう。「普段、展覧会などで実物を観ているときから、どうやって描いてるんやろう? と思っていて。どの材質の筆で、どっから入ってどこに抜けてるんかなと。実際に模写して描いてみると検証できるんですよね。やっぱりこうやってたんや ! っていうのがわかるんです」
筆のよどみ、墨のたまり、ときには画家の気分まで感じることも。「たとえば伊藤若冲の松、鶏の後ろに描かれた松ですね。観ててもめちゃくちゃ楽しそうに描いてるなと思ってたんですが、実際に描いたら、本当にリズムにのって、ノリノリで描いてる感じで(笑)。そうした追体験がすごく楽しかったですね」
一般的に松を描くときと、伊藤若冲の松を描くときの筆運びの違いを、スッと描いて説明してくださる諫山さん。そのときの興奮ぶりが伝わってくるようなリズミカルな筆づかい!
アトリエには大学院の卒業制作で手掛けた俵屋宗達の雷神が。「宗達は大好きな画家。絶対おもろいおっちゃんやったと思うんです(笑)」
先人たちの世界にふれ、自分の引き出しを増やしていった諫山さん。自らの作品を描くときは先人たちに敬意を込めて描線を生かすことにこだわるといいます。
「紙や布の白さとか、そのままの方がきれいと思っているんです。ほんまはあまり塗りたくない、極力塗りたくないくらい(笑)。できるだけ画面を汚さずに絵を成立させるにはどうしたらいいかと思ってますね」
描線を生かすために構図にもこだわりが。「真ん中に描いたら、そのまんまじゃないですか。踊ってる子の手がちょっと切れていたら躍動感が出たり。そういうところはかなり意識しています。構図を考えるのは楽しいですね」
絵を通して知った、昔の人のおおらかさ、
そして美意識を、今の人に伝えたい
アトリエには資料となる本がずらり。 蔵書とともにキャラクターグッズやカンカンなどお気に入りのアイテムも。
「たとえばこれ、見てください、めっちゃ格好良いでしょう ! 」と図録を取り出して見せてくださる諫山さん。「蒔絵師の柴田是真、この人のデザインがすごく好きなんです。普通に描いてもめちゃくちゃうまい、漆でも絵を描くんですがそれがすごく楽しそうでいいんです」
撮影所ではオーダーに対して、その時代に活躍していた絵師を参考に、自ら提案することもあったそう。「昔の人がどれだけ格好良かったかを知ってほしいし、ちょっとずつ目に触れてもらえたらいいなと。今の人たちにプレゼンするぞ ! っていう思いもあって描いてました」
そんな諫山さんが今年手掛けているのが、2024年NHK大河ドラマの衣装人物画デザイン。これまで「ノーマークだった」という平安時代の貴族の衣装を扱うことになり資料を集め、いちから学びを深めたと言います。
「これなんかめちゃくちゃ素敵でしょう? 美しくてイメージが膨らみます」。実際に染色、製織した絹織物の見本が貼られた『色標本 かさね色目』(髙田装束研究所)は宮廷装束の品格と美しさを伝える。
「その時代の空気感とか、格好良いとされていたであろう色合わせとか、そういうのをたたき込んでいきました。資料を見ながら、これかわいいー! という直感や感覚を大事にしながら進めているところですね」
「やっていて思うのは、当時の人の色に対する解像度の高さがすごいということ。当時の染料だと色もどんどんあせていったりする。でも自然界には変わらず色があふれていて、そういう色をとどめておきたいと願う、それができることがすごく贅沢やったんやろうなと思うんですよね」
貴重だった色は気持ちや主張を表現する手段の一つであったはず。「色はすごく贅沢なもの、カラフルなことが娯楽だったんだと思います。カラフルやと気分が上がりますからね」。それはきっと今の時代にもつながる感覚なのかもしれません。
現在、様々な作品を手掛ける諫山さん。公共性のある絵にも意欲的。「八坂神社の絵馬を奉納させていただけると決まったときはすごく嬉しくて泣いてしまいました。皆さんのお正月の思い出に映り込めるって最高じゃないですか! 」
先人たちの美しい感性を受け取り広めるように今様に表現する…。そんな諫山さんの情感あふれる世界にぜひ一度出合ってみませんか。
メインイベントでは諫山さんの
ライブペインティングや
オリジナル商品の販売も!
今回のメインイベントでは、諫山さんのライブペインティングや、描き下ろし作品によるオリジナル商品を販売。唐子のポストカードやレターセット、「amasora」のクッキー缶などが登場します。
「個人的にコレクションをしているくらいカンカン好きなので、唐子ちゃんのカンカンがつくられると聞いて、かなり浮かれてます(笑)。皆さまにもぜひ、愛でてほしいと思ってます」
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9月28日(土)午前11時から
日本画家・諫山宝樹さんによるライブペインティング9月28日(土)正午から
諫山宝樹さんと
染織家・吉岡更紗さんによる
“色を学ぶ”トークイベントその他、お茶会やティーセミナー、和菓子作りなど様々な体験をご用意。
#阪急大人の学び 秋の文化祭ー伝統と今様ー
◎9月28日(土)・29日(日)
※イベントによって開始・終了時間が異なります。◎13階 ダイヤモンドホール
※外商お得意様・ペルソナカード会員様限定のイベントです。
※記事に掲載されたイベント情報や商品は、掲載中または掲載後に売り切れ・変更・終了する場合がございますのでご了承ください。